――黒の剣士が幻想郷を訪れる時、物語は始まる。


SAOのクリアプレイヤー、ALOのお騒がせ者、GGO唯一の光剣使い。

これらの別称は一人のプレイヤーに付いたあだ名である。


そのプレイヤーの名はキリト。

黒の装備を身に纏い、二本の片手剣を巧みに操るその姿はまさに剣の申し子。


が、そんな彼に予期せぬ運命が待っていようとは、誰も予想して居なかった。







西暦2026年 4月某日

ダイシー・カフェにて。


「おいキリト。おめぇどうしたんだ?」

「いや……。ちょっと風邪気味でな……」


例にもよってカフェのカウンター席に腰掛けた桐ケ谷 和人、アーバンネーム:黒の剣士 キリトは怠そうな声を出す。


店主兼親友のエギルは何も言わないが、ジンジャーエールを出してきた。

「俺今日金持ってないぞ……」


「いつもツケで帰る癖に良く言えたもんだ。それよりそんな体調で出歩いて平気なのか?」

「あぁ…。実は用事があって来たんだ。」


キリトは鞄から古めかしいゲームを取り出した。

今じゃ滅多に見る事の出来ない、PCゲームである。


「なんだそりゃあ?」
「レトロなシューティングゲーム。ジャンルは弾幕シューティングって言うらしいけどな」


何ともなパッケージのゲームだ。

映っているのはキャラのシルエットだろうか。


「何でこんな物を持ってるんだ?キリトよ」

「知らない……。と言うか差出人不明でポストに投函されてた」


キリトが取り出したのはゲームが入っていたであろう白い封筒。

確かに封筒には差出人は記されて居ない。


「キリト……。おめぇまさか……」

「うん。やって見ようかなって思って。てな訳でエギル。2階借りるぞ」


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待て!そんな得体の知れねぇ物……、と言うか明日奈にバレたら俺が叱られるだろ!?」


「ほら。そこはエギルの腕で何とか」

焦るエギルを尻目にキリトは店の二階に上がって行った。


――そして彼はこれを機に姿を消した。