あ、と咲良は口をつぐむ。

今のは軽々しく聞く物ではなかった。


完璧にこちらの失言。

「ご、ごめん!つい口が…」


「謝らないで!!」


「え……?」

私は思わず裕をまじまじと見つめて仕舞う。


裕は小さく首を振る。

「君は悪くないよ…。僕がこんなだからいけないんだよ……」


「む。今のはカチンと来た。どう見たって私が悪いだろう」

「だから君は悪くないって…」


「私が悪い!!」

むむむ、と繰り広げられる視察戦。


青春くせぇな……。

おっと、いかんいかん。


「くっくっく……」

「あはは…」


互いに小さく笑い合い、そして沈黙。

「なぁ裕。私と友達にならないか?」


「……はぁ?」

何を言ってるんだこの人は。


「い、嫌なら良いんだ!私がそうなりたいとか思っただけでっ!!」

「……物好きと言うか変人?」


「うぐっ!意外に口が悪いんだな君は……」

「う~ん……。そうなのかな?」


最近まともに人と会話していない(妹と母、氷見以外)ので普段の自分を忘れてしまった。

僕的には普通にしているつもりなんだけど。


(普通じゃありえない状況なんだよねぇ。今の僕)

女性が近くに居て、会話をしていると言う状況。


裕には天地がひっくり返ってもありえない事。


「で、裕の答えを聞きたいのだが?」


「え。答えって何を?」

「なっ!?さっき言っただろう!友達になろうと!!」


イントネーションが若干違う。

と言うか聞いてるなら返答しろよ、とナレーションが突っ込む。


「…………う~ん」

「…………」


「どうしようかなぁ……」

「…………ッ!」


「でもなぁ……」

「えぇいじれったいヘタレめ!!」


咲良がキレた。

と言うか誰だってキレるだろこんな面倒な奴。


「今から私と裕は友達だ!私は君を裕と呼び、君は私を咲良と呼ぶ!!分かったか裕!」

「えと……。はい…さ、くらさん…?」


たどたどしい僕の言葉に咲良さんは満足げに頷いた。

「ではよろしくな。裕」


不意打ち気味な咲良の言葉が僕の胸を少し暖かくした、気がした。


「こちらこそよろしく……。咲良…さん」


それは夏の某日の事だった。





2.夏のキモチ End