2.夏のキモチ


日付は少し変わった夏休みの某日。

裕は炎天下の中を一人、孤独を引き連れ歩いていた。


その理由は、「夏休みなんだし、家でボーッとしてるなら外に出ろ」と奏に家を追い出されたから。

そう言った妹様はクーラーの効いた部屋でゴロゴロしている事だろう。


「僕を虐めて何が楽しいんだ……。我が妹よ」

うらめがましい呪詛を吐いた所で、降り注ぐ太陽と照り返しの熱が防げる訳がない。


だから僕はひたすら日影を求めて歩いている。

が、これと言って良い日影は存在しない。


あってもファミレスや飲食店くらいな物で。

(どうしてあの手の店に入ると、何か頼まなきゃいけない気分になるんだろうか……)


どうでもいい事を考えながら裕は歩きを止めない。

今の時間は午前11時35分を過ぎた頃。


そろそろお昼時だし、暑さもピークになる。

「財布持ってないし……」


ファミレスは疎か、コンビニすら入れない始末。

金がないなら仕方ない。


僕は夢遊病患者の如く歩き続け、いつの間にか小高い丘の上に立っていた。

見下ろせばいつもの町並み。


「生きてるなぁ……」

気持ち悪い言葉が口をついて出た。


自分自身が生きている事を改めて実感する。

「って、ここ何処だろう?」


ふと辺りを見渡せば見慣れない景色。

丘の上にいるのだから下に降りれば良いと考えるが、その道が見当たらない。


つまり、この状態は……。

「迷子……か」


17歳にもなって迷子とは、自分でも呆れる。

って呆れている場合でもないが。


「とりあえず道を探して……」


裕が辺りの探索を始めようとした、その瞬間。


バケツをひっくり返した様な水が裕を襲う。

空はドス黒い雲に覆われ、雷鳴が鳴り響いていた。


夏特有の通り雨。

「……………」


自分の知らない場所で、ただ一人無抵抗のまま雨に晒される男がそこにいた。

と言うか僕だった。






同日、同刻、町外れの丘にて。


「はぁ……。せっかくの読書日和が台なしだ」

人知れずため息を吐き、雨の中を歩く少女。


背が高く、腰まである髪が特徴的な美少女。

名は桐山 咲良と言う。


「わざわざ遠くに来て本を読む。これの良さが分からないのか。空気が読めない雨め」