ゆっくりと、しかし着実に時は進む。


↓本編








満月が昇る夜。

幻想郷の各所では眠らない騒ぎが起こる。


妖怪や妖精、はたまた吸血鬼や鬼まで。

幻想郷に住む人間以外の者達は、満月の日に活性化するからだ。


だから人間達はその日が過ぎるのをじっと待つ。


一部を除いては。



「イナバー…」


ウドンゲの耳で遊ぶ輝夜。

その声色には退屈の二文字が浮かんでいる。


「なんですか姫様?いつもなら月見ダァーッ!って盛り上がるのに」


ウドンゲが鋭いツッコミをかますが、輝夜は答えない。

「ウドンゲ。姫はシロ君が居ないから、寂しいのよ」


永琳が苦笑いで言うと輝夜はあらかさまに動揺してしまう。

「ななななにを言ってるのよ!?そんな訳ありませんの事よ!?」

「シロですか…。あの人間風情が……」


ウドンゲが露骨に嫌な顔になる。

一方の永琳は苦笑いのままため息をついた。


「人間。しかも将来有望のいたいけな少年が、姫に惚れてしまうのは頷けます」

しかし、と永琳が一息入れる。


「好きになるのが急過ぎではないかと。シロ君は来てまだ5日ですし」

「……それは」


確かに変だ、とウドンゲは永琳の言葉を反芻する。

一目惚れを除く、恋愛の始まりから恋と自覚するまでは、多少なりともラグがある物。


しかしシロは今じゃ輝夜にゾッコンラヴだ。


何かあるとウドンゲは勘繰る。


「姫様。まさかあの人間と変な事してませんよね……?」

「…………」


輝夜の肩がピクリと震え、目に光が消える。





後編に続く。