完結に向かう物語は嬉しかったり、悲しかったり。




   第三楽章
  「笹本 薫」


あの日から数日が過ぎた。

俺は毎日水やりに行き、音楽室にも足を運んだ。


しかし桜は居なかった。


「俺、嫌われたのかなぁ・・・」

愚痴を漏らしながら教室で水やりを続けて居る響。


ぼー。っとしながらもしっかり仕事をこなす。

「子宝草にオリヅルラン、それと・・・」

世話する響に見慣れない植物が目に映った。


圧倒的な存在感。大きな筒。植物独特の臭い。

「・・・ウツボカズラ?」


何故か蔦植物が教室の隅に巻き付けて合った。

「それの名前が解るとは流石だな。高村」


「ぅげ・・・」

いつの間にか後ろの席に笹本 薫が座って居た。


いつものスーツではなくノースリーブタイプのタートルネックを着ていたが。


「何の用ッスか?先生」


俺が質問を投げると担任は指だけで「ついて来い」を示した。

何だってんだ畜生・・・。








「まぁ掛けろ」


付いていった先は生徒指導室だった。

「何ッスか・・・?」


「同じ事を二回も言わせるな。大人しく座って待ってな」

薫は顎でパイプ椅子を指した。


不信感を覚えつつ、しぶしぶ席に着く響。

「高村はコーヒーはミルク?砂糖?両方?」


「・・・ブラックで」


「ほう・・・。大人だな」

生徒指導室備え付けの給湯機でコーヒーを入れる担任。


俺はその背中をただ見つめて居た。


(スーツよりこっちの方が絡みやすいかもな・・・)


セミロングの髪を後ろで適当にまとめている為、動く度にピョンピョン跳ねる。

それが服装にマッチしているのが流石だ。


「熱心に見ても何も出ないからね」

薫が背中を向けたまま言葉を出す。


背中に目でもあんのかよ・・・。

「はい。ブラックコーヒー」


なんて考え事をしている間に薫が反対側の席に座って来た。


俺は差し出されたコーヒーをおっかなびっくり受け取るのだった。








次回更新に続く