上げるのが遅いです・・・。










「・・・まだかな?遅いなぁ」

音楽室で待つ桜は椅子の上でそわそわしている。

今日も昨日と変わらない服装で待つ桜。

ふと、扉の前に人の気配がした。


「響!遅かったじゃな・・・」

ガラリと開いた扉から現れたのは、笹本 薫だった。


「おや。私を高村か何かと勘違いしたのか?」

「笹本っ・・・!!」


「そう睨むな。高村なら廊下でのびてるはずだ」

軽い口調で話し掛ける薫に対して、桜は敵意剥き出しで睨みつける。

「何でお前がここに来るっ・・・!!」


煙草を取り出し、口にくわえた薫は冷たい視線を投げる。

「お前・・・高村に惚れたな?」


「っ!」


「これは命令だ。高村に近付くな」

煙草に火を付けようと、右手をポケットに伸ばす。


刹那、顔のギリギリを掠めて椅子が飛んで来た。

「ふざけるな!!私が誰に何をしようと勝手だ!」


激昂する桜。

その周りには、何の力も受けずに浮く椅子や楽譜。


「お前は懲りないな。ポルターガイストの使い方も知らないガキが」


薫が、跳んだ。

踏み込んだ足で前へ跳躍する薫。


それに物体操作で応じる桜。


左からの椅子。上から降る楽譜。前から飛ぶ指揮棒。

あらゆる方向から様々な物が襲い掛かる。


しかし、その一つも薫には当たらない。


一瞬で肉薄した薫は静かに語り掛ける。

「お前の未練を晴らす為に意識を与え、輪廻から外してやった恩を忘れたか」

「・・・・っく!」


「奴を未練に付き合わせて、生気を吸い尽くすのか?桜」


「・・・・・・」


肉薄を解いた薫が静かに告げる。

「立場を考えろ。奴は人間で、お前は・・・」

紫煙を吐き出し言い放つ。

「幽霊だ」


それじゃあ。と薫は去り、音楽室には透けた身体の桜だけが残った。


「・・・畜生」

夕方の光が煌めいた音楽室には、もう誰も居ない。




  第二楽章

    完