生きていればまた挑戦はできる。それでも。
悔しくて仕方なかった。あの時自分たちは、いいや自分は勝てなかったのだ。仲間を守り、自分も生きてあの場から帰還して、少なくとも天災やクーデターなどの人災以外では人々を救えると信じていた。
いいや、またどこかでクーデターが起こったとしても容易に収束できるだろう。力を得ていたら。
決まった人間だけが世界を統治するのは危険だ。しかし、日々をただ懸命に家族のために生きている者たちの生活を守りたかった。その意志はいまもまったく変わらない。
素直に認めるならば、まだ実力が伴わなかったのだ。異形の者に対しての。かつて人間以外のものと戦ったことはなかった。前回の旅ではついに街を出た場所で草原で山で、森で様々な戦いを経験した。
人を守りたいという気持ちが強かったが、人々がモンスターと呼ぶ彼らもただそこで生き、家族を形成しているだけだったのだと気づき始めた。なんとか自分を奮い立て「人々守れ」と思い続けてたが心のしこりは取り除けなかった。
人間もモンスターもただ生きているのだ。誰かが「モンスターはいきなり襲ってくるものだ」と言ってきたこともあったが、それは人間が彼らのテリトリーに入って行ってしまったからではないのか。人間は国を街を形成する。そのなかで生活していればいいものを、あの山をあの森も支配してやろうと思うから、その反撃を受けるだけではないのか。
それぞれのテリトリーを守ればいいだけではなかったのか。自分は人間だから人間を守ろうと思った。しかし、あえて他の領域まで侵そうとする者たちを守る必要が本当にあるのか。異形の敵たちも彼らが人間を凌ぐ力を持っていただけだ。敵ではないのかもしれない。
ただ倒されるというのならそれは人間が弱いのだ。