若い夫婦が住居を失い、幼い子供を抱えながら正気を失っていく物語。
インディーズ作品だと思う。
この作品は知らなかったが、「STS ENTERTAINMENT」配給の作品は当たり外れが大きいので、身構えて観てしまった。
引っ越しを控えた若い夫婦、イ・ハンギョル(チョン・ボンソク)とチェ・ゴウン(パク・チョンヨン)は、引っ越しの日までチムジルバン(スーパー銭湯とサウナを足したような施設)を転々とする。
ところが保証金詐欺に遭っていたことが発覚し、行く当てを失ってしまい、チムジルバンを転々とする暮らしが続くある日、ゴウンが目を離した隙にウリム(シン・ヒョンソ)が怪我を負ってしまう。
ハンギョルは勤めるバイク便の社長(チャン・ジュヌィ)に給与の前借りを断られ、困ったハンギョルは配達先の馴染みのお婆さんキム・イェブン(ソン・グァンジャ)の家に向かい、三人で暮らし始める。
二人は孤児院で育ったような設定だと思う。
だから身寄りもなく、頼る人間もいない。
夫のハンギョルにはどこか後ろめたさがあるが、妻のゴウンは加速度的に壊れていく。
貧困が極限まで二人を追い詰めたとも言えるが、彼女には元々その素地があったように見える。
そもそもウリムが怪我を負ったのも彼女の不注意からで、ハンギョルは怒りを飲み込み、それでも彼女に寄り添った。
ゴウンを見ていると、ある出来事を思い出した。
アイロンをかけていて、その場を少し離れた隙に次男が大火傷を負ったことがある。そして長男はスーパーで、こちらも火傷して帰って来た。
盆踊りに行くと主婦友と会話に夢中になり、次男が花火を踏んで火傷して帰ってきたりもした。
どれも自分の不注意が原因のはずなのに、悪びれた様子はなかった。
話はそれたが、だからこそ私には、ゴウンのことが手に取るように理解できた。
わずか一か月だけ、お婆さんの家に住まわせてもらってるのに、悪びれもせず家具の配置を変えようとしたりと、「この女なら不思議でない」と思って観ていたが、お婆さんが死んでいたことが分かると「やっぱりな」という行動に出る。
まぁ、子どもを守ろうとする母性ゆえの行動と言ってしまえばそれまでだが、やっぱり感覚が違うような気がした。
ハンギョルがお婆さんが好きだった寿司を食べながら「もう少しここにいたらダメですか?」と涙ぐむシーンがあったが、あれは彼なりの懺悔であり、それと同時に彼も腹をくくったんだろうな。
そして、ようやく得た"居場所"を失いたくないという切実な願いも込められてたようにも思う。
意を決したのか、お婆さんを埋めた庭に祭壇を作り、家族で見送る。
ラストは、社会福祉士(キム・ヒョンジョン)が来て「独居老人の管理終了の手続き」に来るよう告げて終わる。
実際の福祉行政なら、お婆さんの身寄りは最初に調べると思う。
福祉士の表情もなんとなくそれっぽかったし。
それでも、その先をあえて描かなかったことで、この家族の未来は観る側に委ねる終わり方になってる。
