監督キム・ジョングォン、脚本チョン・ユ、2020年に韓国で劇場公開されたが日本未公開作品。
原題は直訳すると「愛していますか?」。
これがフックになっているので、邦題を期待して観るとストーリーが伝わらないし、ラストの伏線にもなっているので、期待外れになるかも。
認知症で要介護の母親を抱えながらパティシエの夢を追いかけるソジョン(キム・ソウン)。
しかも恋愛経験ゼロの鈍感女でありながらも、職場の上司スンジェ(ソンフン)のことを密かに慕ってる。
スンジェは彼女の事が好きだが素直になれない。
それどころか逆に強く当たるので、ソジョンは彼に嫌われていると思ってる。
そんなある日、閉店したお店に老婆が尋ねてきて、ソジョンが出した料理のお礼にと本を置いていく。
表紙には「愛(恋)していますか?」と書かれていて、ページを捲るとその日の出来事に対する答えが書いてある。
あまりの的中率に半信半疑だったソジョンは、本の指示通りに行動するようになる。
しかしある日、お店で本を読んでいる時に落としたことでスンジェがこの本を拾い、彼がページを捲ると「あなたは既に、あの人に惚れられている」と書いてあった。
ここからソジョンとスンジェを巡る恋の攻防がはじまる。
はじめはキム・ソウンがシン・セギョンに見えて、演技もそれっぽかったので期待した。
ストーリーをサポートするピアノの伴奏もよく、プロットは面白いのに、韓国映画らしい勢いやテンポがなく、全体的に雰囲気も沈みがちでリズムも悪い。
これは役者の力量による部分が大きく、役者が脚本の穴を埋める韓国らしさがない。
イ・ジュノやシン・セギョンみたいな、演技ができて、それ以上に雰囲気が作れる役者ならもっと面白かったと思う。
そういう意味では力不足な二人やったかな。
と断ったうえで感想を言わせてもらうと、低予算なのか、若手育成なのかは分からないが、そこそこ頑張ってて面白かった。
映画として悪くはない。
それだけに、もったいない気がする。
一応はジャンル的にラブロマンスなんだろうけど、ちょっとミステリアスな雰囲気もあり、終盤はラストが読めない、いわゆるラブコメらしい終わり方ではない。
むしろ内容は、過酷な現実をひたむきに生きるソジョンへの応援歌になってるのに、邦題で勘違いしていた。
そわそわしだしたソジョンに「愛する人と熱い一日に」という本のメッセージがあったが、「そっちの『熱い』か!」と思わず突っ込んでしまい、笑ってしまった。
この本はソジョンだけのものではなく、本を手にしたすべての人の本だと思ったけど、やっぱりソジョンの本だった。
だからスンジェにも「あなたは既に愛されてる」と言った。
ではこの本の正体は?になるんだが、ソジョンの周りには認知症の母親しかいない。
薄々想像はできるようになるが、とにかくこの本の役割が面白い、観てるこっちは振り回されっぱなし。
そうなると製本屋のシーンの解釈が難しいが、あれはスンジェがこの本をきっかけに、自分で行動を起こしたと言うことかな。
さまよった母親を連れ帰り、ソジョンが足を拭いてあげるシーンで、母親がチョン・ミソンに似てて驚いたけど、後に2020年作と知った。
ラストの字幕は「恋」ではなく、「はい、愛しています」が正しい。
この一言で原題を回収する演出になっている。
だから邦題は「恋していますか?」にすべきなんだよね、本の表紙の字幕も「恋していますか?」になってるので。
原題の「사랑하고 있습니까?」を素直に訳せば「愛していますか?」になる。
ただ、「사랑(愛)하고(して) 있습니까?(いますか?)」は文脈によっては「恋愛をしていますか?」とも受け取れ、この映画の感じからすると、こっちの方がしっくりくると思った。
字幕もそうなってるし。
冒頭でソジョンが「私は恋愛経験もなく」と言っていて、彼女の介護と仕事に追われる暮らしを考えると、たまには休んで「恋」をして人生を楽しみなさいと、語りかけているように見える。
うがった見方かもしれないけど。
そしてエンドロールに「美しき映画人 故チョン・ミソンさんを忘れません」となっていて、ここは鳥肌もんやった。
序盤は少し物足りなさも感じたが、終盤で想像の斜め上をいく脚本にひっくり返され、最後には「観てよかった」と思った。
