法では癒されない遺族の心情に乗っかり、社会正義の倫理観が崩壊していく様子を描いた、報酬を巡る救いのない全人類暴徒化バトル。
シーズン2作りますって終わり方やったけど、ないやろうね。
報酬を与えて法で裁けぬ悪を裁くマスクマンの金を目当てに、ユン・チャンジェ(イ・グァンス)とイム・ジホン(ヒョン・ボンシク)は、チャンジェの耳を切り落とすことで10億ウォンを手にする。
しかしチャンジェが病院に運び込まれたことから、いやいやながらも捜査にあたる刑事ペク・ジュンシク(チョ・ジヌン)は、ジホンの家で大金を目にする。
そこに偶然帰ってきたジホンが逃走したことから追いかけるが、ジホンは死んでしまう。
先物取引に失敗し、金の工面でせっぱ詰まっていたジュンシクは、ジホンの金を持ち去ってしまう。
この事実を知ったチャンジェはジュンシクの足取りを追う。
13年の服役を終えて出所したキム・グクホ(ユ・ジェミョン)は、200億ウォンの報酬をかけられ、生き残るためにジュンシクら警察を利用しようとする。
弁護士のイ・サンボン(キム・ムヨル)は複合施設の手助けを条件に、ホサン市長アン・ミョンジャ(ヨム・ジョンア)に打撃を与えるためにグクホを利用することを思いつく。
サンボンは集会へ駆けつける主催者がいず、届け出もないので法律に違反してるといい、警察に逮捕しろといいグクホを利用することを目的に弁護契約を締結する。
ジュンシクを特定したチャンジェは、金を持ち去ったことをネタにジュンシクを脅すことを思いつく。
チャンジェは一度は金を返そうと考えるが、すでに手遅れで、その金は返済に消えてしまい戻ってこない。
ジュンシクはマスクマンがランダムにターゲットを決めていたのではなく、はじめからグクホだけを狙っていたことをカモフラージュしていたことに気づき、マスクマンの正体を追うことになる。
チャンジェは、ジュンシクが持ち去った10億ウォンと引き換えにグクホの200億ウォンを狙い、グクホを自分の元に連れてこいと娘のソミ(チェ・ミョンビン)を誘拐する。
とにかくキム・グクホは刑期を終え償いは済んだと開き直る。
自身の成り上がりのためならなんでもする弁護士イ・サンボン、自身の政治生命を守るためなら人殺しも厭わない女性市長アン・ミョンジャ。
そしてマスクマンは誰で、目的はなんなのかを追いかけるのが刑事のはずのペク・ジュンシク。
元はと言えば、現場の証拠品である現金をジュンシク自身が着服したわけで、どこにも同情はない。
そういう意味では皆さんキム・グクホと同じに見える。
正義の鉄槌だとグクホの首を狙う市井の人々も、正義よりも金が目的なのは明らかで、設定そのものに救いがない。
こういった作品が世に出るのは、こういった風潮があるからだと思う。
200億のお金がかかった「歩くボーナス」と化したグクホが、コンビニにいくというと警察が客を追い出し警備するというカオス。
結局、グクホの元被害者が放った矢で身代わりとして刑事が意識不明になるが、これもマスクマンの報酬が目当て。
一旦は謝罪はするけど、グクホは13年の刑期を終えたので「何が悪いのか」と思ってて、現実的にもこういった行動が心情の怒りの源泉である。
では、刑期を終えたらどうしろというのかという話になって、法治国家の前提が根底から崩れる。
金がかかってなかったらここまで社会正義は盛り上がったのか?
先日見た『ゴールドランド』もそうだが、金が人格を変え、それが行動の源泉になり、社会の分断を生むメタファーになってて、現実社会を投影してると思う。
出所を控えたグクホに「お前を殺すために大勢が集まってる」と言われると「私は刑期を満了しました」という。
するとジュンシクが「罪は帳消しにならん」と言い放つ。
このセリフをチョ・ジヌンがいうところに、予知でもしていたのかと驚くとともに、虚しさを感じる。
遺族の心情とは別に社会正義のように騒ぐやつもいる。
つい先日、北海道旭川市で女子高校生が殺害された事件の裁判に乱入した男がいたけど、この人たちは、騒げれば何でもいいので深く事情も知らずに行動してる。
こうした暴挙は「判決を重くする」ことには1ミリも寄与せず、むしろ、「自分が正しいと思っているから、ルールを破って暴れてもいい」という論理を認めてしまうということにもなりかねない。
覚えてる人もいると思うが、こうした「正義」の暴走をメディアが率先して煽ったことがある。
その被害者であるチョ・ジヌンが、社会的正義と法治社会の間で揺れ動く刑事を演じることに、不思議なリアリティを感じた。
彼が今この作品を観たら、何を思うのかな。
だから、チョ・ジヌンには帰ってきて欲しい。
『シグナル』も観たいし。
ちなみに、第一話でジホンがジュンシクに追いかけられて逃げる「上り坂やろ」というシーンは、『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~』でイ・ジアン(IU)がおばあさんと一緒に住んでたところで、イ・ソンギュンももう見れない。
