白血病をきっかけに再会した兄弟の物語。
世界的指揮者のティボ(バンジャマン・ラヴェルネ)は突然、白血病と診断される。
実の妹と思っていたローズ(マティルド・クールコル=ロゼス)とは適合せず、それどころか血の繋がりがないことが分かる。
母親(リュドミラ・ミカエル)からは幼い頃に養子に出され、生き別れた弟がいることが分かりジミー(ピエール・ロタン)を訪ねる。
初対面にも関わらず、急に尋ねてきた兄を名乗るティボの話を聞いたジミーは、戸惑いながらも骨髄移植に同意する。
ジミーは地元の市民バンド(吹奏楽団)でTb(トロンボーン)を演奏していて、お礼に訪ねてきたティボを楽団のメンバーは温かく迎える。
ところが、コンクールを目指していたバンドの指揮者がいなくなり、ジミーはティボに指揮を依頼するが、ジミーに「自分が振ればどうか」とレクチャーを受けることになる。
しかし、バンドそのものの存続が危ぶまれる展開になる。
兄のティボがクリーブランドの常任で、弟が市民バンドのTb。
そのバンドが存続の危機を迎え、「さぁどうする」という分かりやすい展開。
ところがもう一捻りあり、期待と違うラストだったが悪くはなかった。
フランス映画にも関わらず「ラベルを知らない」は「え?」と思ったが、兄はプロ、弟はアマチュア。
それでいて離婚して娘ともまともに会えない。
これは無理やり感もあったが、白血病からはじまる家族の絆の物語になるので仕方ないかもね。
時間的にも100分程度なので、少し時間を割いてティボの凄さが分かるような迫力ある演奏を入れて欲しかった。
そしてジミーにしてもアマチュアバンドを続ける理由みたいなものを描いて欲しかった。
ティボがバンドを振るシーンで、クラリネットの女性に「“スラー”と“スタッカート”の違いが分かるなら……」と聞くと、女性は「あたりまえでしょ」と堂々と答える。
短いが、これはアマチュアバンドのプライドであり、新響を作った芥川也寸志が言った「音楽はみんなのものであり、その“みんな”を代表するアマチュアこそが音楽の本道である」を思い出した。
このシーンの続きで、彼女は堂々と「譜面を覚えてるから譜面がない」と言ったが、これはない。指揮者の指示を書き込むからね。
団員が笑ったのはそのためで、こちらも笑ってしまった。
アマのバンドがプロの指揮者に見てもらえるのもある意味プライドで、私も、朝比奈隆のお弟子さんである今地さんに振ってもらった時は嬉しかったのを覚えてる。
高校生になってすぐに定期演奏会があり、練習で譜面を見て大笑いしたことがあり、しばらくその箇所に来ると吹けなかったことがある。
“poco a poco accelerando”という音楽用語があるんだが、意味は「だんだん早く」というもの。
その下に赤鉛筆で「点点早く」と書いてあった。
これは韓国語話者でも分かる人が少ない難題で、Facebookのグループで、ピアニストの都甲紀子さんにも「分かる?」と聞いたけど答えられず、説明したら笑ってた。
とにかく譜面の書き込みは、自分たちだけが理解できるワードの宝庫。
いろんな書き込みがあったし、書いた。
ラストはオフステージでスネアが鳴り始め、”新手のフラッシュモブ”のように終わるが、もっとTbとドラが交互にうなって終わっても良かったかも。
というか、そうして欲しかった。
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途中から完全にレビューの主役が「映画」じゃなくって「音楽やってた頃の自分」になってもた。
