同じような日常をぐるぐると彷徨いし続ける男の物語。
原題は「北村(プクチョン)方向」。
映画監督のソンジュン(ユ・ジュンサン)は、プクチョン(北村)に住む先輩の映画評論家ヨンホ(キム・サンジュン)に会おうとするが会えず、学生らと飲んだ勢いで元恋人のギョンジン(キム・ボギョン)を訪ねる。
ギョンジンを丸め込んだソンジュンは、ある日ヨンホに会い、彼の後輩である女教授ポラム(ソン・ソンミ)と「小説」という酒場に行く。
しかし、そこのオーナーがギョンジンとそっくりで、ソンジュンは驚く。
その後、ソンジュンはヨンホと元俳優ジュンウォン(キム・ウィソン)の三人で酒を飲むが、ソンジュンの記憶とは違い、ジュンウォンから過去の行いを利己的だと罵られる。
さらにポラムも合流し、四人で再び「小説」へ向かう。
ソンジュンはポラムに目移りするが、酔った勢いで「小説」のオーナーとキスをしてしまう。
無料枠になってたので再視聴。
出演者が何かしら映画に関わってて、この映画もホン・サンスの実体験を投影しているように感じる。
ソンジュンがだらしなく、自己的で優柔不断で行き当たりばったりで、昔の閉じられた映画界隈の人間関係ってこんな感じやったんやろうね。
私も行ったことがあるが「北村韓屋村」で有名な北村は、ソウルの中でも伝統的な韓屋が残る、過去と現在が共存する場所。
日本で言うと金沢の東山界隈のような雰囲気に近いというか、そのまんま。
どちらも古い街並みが残り、一歩路地に入ると時間が止まったような、それか過去に迷い込んだような感覚に陥る、迷路のような場所なので。
タイトルの「北村」は、ソンジュンが、過去の知人や昔の元恋人に似た女性と何度も遭遇し、デジャヴのような出来事を繰り返す舞台になってる。
古い時間の記憶が残る場所の様な意味を持ち、しかも「方向」となってるのは日本語的には「〜あたり」になる。
これといった目的地はなく、その周辺をうろつき回り、同じような店で飲み、同じような会話を繰り返すソンジュンのだらしなさ。
「過去の執着」や「同じパターンの人間関係」という決まったルートから彼は一歩も外に出られてない。
だからソンジュンは「北村あたり」で、無意識のうちに繰り返される日常を送ってる。
ラストで映画ファン(コ・ヒョンジョン)に、写真を求められるシーンの背景が「北村道(北村路散策図)」の看板になってる。
ここでぎょっとしたソンジュンの表情がシュールで、本人も迷路のような人生を歩んでることに気づいたのかもしれない。
