精神病院を舞台に、運命に抗う2人の青年の姿を描いた作品。
作家チョン・ユジョンの第5回世界文学賞受賞作。
母親の死を目撃したショックで精神に異常をきたしたイ・スミョン(ヨ・ジング)と、相続争いで強制的に入院させられたリュ・スンミン(イ・ミンギ)は同じ日に入院する。
スミョンは現実を受け入れてるが、スンミンは病院からの脱走を考えており、従順だったスミョンもスンミンに影響され、徐々に自分を取り戻していく。
物語は、トラウマに苦しむスミョンと、遺産争いに巻き込まれ強制入院させられたスンミンの友情を軸に進む。
とにかく看護師たちの仕打ちが過酷で、二人は地獄のような環境にありながらも、「自分の人生の主人は自分である」ということを証明しようと奮闘する。
日本でも精神科病院や福祉施設での虐待のニュースは珍しくないが、本作の描写はかなり苛烈で、最初はやりすぎではないかと思った。
調べてみると、作者のチョン・ユジョン自身が看護師として働いた経歴を持ち、現場の空気をリアルに再現したものだという。
それをあえて「ブラックコメディ」として描くことで、悲劇を乗り越える人間の生命力を強調しようとした。
インタビューで、この小説の執筆意図について「運命が自分を沈没させようとするとき、自分はどうするか」と語ってる。
だからこそ閉鎖病棟は、自分の力ではどうにもできない「不条理な運命」や「抑圧的な社会」の縮図として描かれてる。
虐待の描写も、単なるショック演出ではなく、その不条理さを極限まで高めるための装置で、そこから逃げ出すのではなく「どう立ち向かうか」を浮き彫りにする役割を持っている。
エンドロールのメッセージは、その答えを示してると思う。
スンミンとスミョンがボートで逃げるシーンは爽快で、ラストのパラグライダーも良かった。
