困難を背負いながらも、一人の女性への愛のために生きた、名もなき男の生涯を描いた作品。
クリント・ベントリー監督の『トレイン・ドリームズ』と何となく似てて、観入ってしまった。
孤児のアンドレアス・エッガー(イヴァン・グスタフィク)は、
渓谷に住む遠い親戚クランツ・シュトッカー(アンドレアス・ルスト)に引き取られ、彼の農場で暮らすことになる。
しかしシュトッカーにとってエッガーは、家族ではなく、ただの安価な働き手に過ぎなかった。
そんな暮らしの中で、エッガーの唯一の支えは老婆のアーンル(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)だったが、彼女もまた、ある日突然この世を去ってしまう。
シュトッカーの2人の息子は戦争で命を落とし、農場の働き手はエッガーだけだったが、アーンルを失ったエッガー(シュテファン・ゴルスキー)は彼の元から去る。
農場を出たエッガーは、日雇い労働者として生計を立てながら貯めたお金でアルプスの麓に一軒家を借り、想いを寄せていたマリー(ユリア・フランツ・リヒター)と結婚する。
生涯マリーを守る決心をした彼は、渓谷に電気とロープウェイ工事の作業員となり幸せな結婚生活を送っていたが、突然の雪崩ですべてを失う。
独り身となったエッガーは、生涯マリーへの想いを胸に抱いたまま、生き続けることになる。
冒頭から観ていて、あまりにも幼い子どもが過酷な運命を背負わされることに胸が締めつけられる。
しかも彼は無口で、感情を外に出さない。
それでも前を向いて生き、マリーを麓の自宅に案内する時の誇らしさとは裏腹に、玄関の造りが浮いてて、「この草原に、本当に意味があるのか?」と思わせる感じが微笑ましい。
そして彼女に「農家にはならない、農家になるとずっと土を耕すことになる、下を向き続けることになるから」とプロポーズをする。
ここまでは本当に良かったが、この後の彼の人生は何なのか。
エッガーには守るものがあったが、一丁あがった人間の人生って似たり寄ったりな感じがした。
