発達障害を持つ母親が、自分の人生を畳むことで生きることを教える良作。
持病を抱え余命を意識しながら、知的障がいがある息子を育てる母の視点で、息子が自分がいなくなっても生きていけるよう、生活スキルや社会との接点を少しずつ整えていく過程、自立への「準備」を丁寧に描いている。
映画としてはありがちなストーリーだが、どこか割り切った描き方で、無理に泣かすようなシーンはない。これが逆にカウントダウンとしてリアルに迫ってくる。
発達障害のインギュ(キム・ソンギュン)を持つエスン(コ・ドゥシム)は、障害児を産んだことを負い目に感じ、インギュ中心の人生を送ってきた。
そのせいで娘ムンギョン(ユ・ソン)は自分が犠牲になったと感じ、インギュと向き合うことができない。
そんなある日、エスンは自分の寿命が差し迫ったことを知り、インギュが自分がいなくとも暮らしていけるように、自立させることを決意する。
しきりにでてくる「食べたい」「ご飯を作って」、逆に「ちゃんと食べろ」と、といった日常の言葉は、現実の母目線。
障害を特別視せず、親子の現実的な不安と希望を真正面から描いている。
特に過剰な演出はなく、最低限の日常を細部にわたり丁寧に積み重ねて、結末までの感情の蓄積でカタルシスが待っている。
これぞ大阪のおばちゃんというようなコ・ドゥシムの包容力たっぷりの演技と、「図体はデカくとも」という等身大の息子像を体現するキム・ソンギュンの演技が最高にいい。
娘ムンギョンのややこしい感情も丁寧に描かれていて、「自分は犠牲になった」という思いが最後に溶けていく過程もいい。
コ・ドゥシム、キム・ソンギュン以外に、ユ・ソン、パク・チョルミン、キム・ヒジョン、シン・セギョンが出ていて、豪華な配役が満足感に貢献してる。
私的にも身の回りには、色んな障害をもった子を抱える家族がいて、小さい頃から見てることもあり、とても他人事とは思えない。
幼い頃から面倒を見てくれた姉の友人が、余命3ヶ月であの世に旅だったが、きれいに整えて逝った。
私も線香を上げ、遺影にお礼を言ったが、子に障害があろうがなかろうが、整えて人生を終えることは大事だと思う。
