サスペンス・スリラーの名作『マーシュランド』 | 三匹の忠臣蔵

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1980年9月20日、フランコ死去から5年のスペイン・アンダルシア地方を舞台にした、連続少女殺人事件の真相を追う本格ミステリー。
推理映画の名作、見る人によってさまざまな解釈が生まれるらしい。
Facebookで知り、私も推理に挑戦してみた。
 


 

まず、主な登場人物はこんなところかな。


ペドロ・スアレス(ラウール・アレバロ)刑事
フアン・ロブレス(ハビエル・グティエレス)刑事
ロドリゴ(アントニオ・デ・ラ・トーレ)被害者の父親
ロシオ(ネレア・バロス)被害者の母親
キニ(ヘスス・カストロ)女たらしの青年
カーサ・ソト(メルセデス・レオン)猟師宿の女主人
ジャーナリスト(マノロ・ソロ)
ミゲル(ヘスス・カロサ)
アンドラーデ(フアン・カルロス・ビリェヌエバ)判事役
アルフォンソ・コラレス(アルベルト・ゴンサレス)
セバスティアン・ロビラ(マヌエル・サラス)
マリーナ(アナ・トメノ)

 

 

 


 

ストーリー


ペドロ・スアレス(ラウール・アレバロ)は、マドリードから左遷された刑事。
反民主主義的なやつらを告発しただけだが、世間は民主主義に慣れていないと思ってる。
フアン・ロブレス(ハビエル・グティエレス)は売春婦から賄賂をもらったとの噂がされている。

3日前、尻軽の噂が絶えない17歳のエストレアと16歳のカルメンの姉妹が、白いシトロエン(ディアーヌ6か2CVでボンネットに丸いライト)に乗るところを最後に姿を消した。
預金通帳を持って出ていったが、自分の意思で家を出たわけではない。
父親ロドリゴ(アントニオ・デ・ラ・トーレ)は娘を恥じている。
母親ロシオ(ネレア・バロス)が渡したフィルムには二人の姿が写っていた。
二人はディアーヌ6に乗ったらしい。
ロドリゴの車は黄色いディアーヌ6、夜は白く見える。

アンへリタは死者と話せる霊能者らしい。
彼女は「二人は農場の廃屋にいる」と言い、井戸からエストレアのものと思われるバッグを発見される。

そして川でカルメンとエストレア姉妹の遺体が発見される。
一人は乳首が切り取られ、複数の刺し傷があり左手が焼かれている。
もう一人は首まわりと腹部、胸部に切り傷があり、左手の指三本が切断されている。
二人ともレイプ痕らしき裂傷があり、後ろから襲われている。
水に浸かって2日ほど経っている。

フィルムの現像写真が届き、顔が写っていないが、右手に三角の刺青がある。

夜、銃を持った男、カストロとの会話。
ベアトリスも殺された、切り刻まれて捨てられ、足だけしか見つからない。
コスタ・デル・ソルから戻る予定だったが、「仕事がある」と戻らなかった。
自殺ではないという。

フアンは血尿が出て薬を飲んでいる。幻覚も見ているようだ。

ペドロはフィルムに番号があるのを見つける。

朝食の時にフアンが言う。
検視結果が出た。タイツに精液が付着、血液型はAB型。
ミゲル(ヘスス・カロサ)が車の所有者リストを渡してくれるというが、ペドロはいつ話をしたのか?と聞く。

ベアトリスの遺品
ボートのスクリュー、切断された右足、マニュキュアを塗っている。
ノートの中から「女性に労組の機会を」とのチラシが出てくるが、これはエストレアとカルメン姉妹の家にもあった。

ミゲルの案内で廃墟にいくが、これが誰の家なのかは分からなかった。
家の主は娘がお漏らしで死んでから戻ってない。
ペドロが見つけた写真にはベアトリスとエストレア、キニ(ヘスス・カストロ)、カルメンが写っている。

新たな被害者アデラの母に聞くと、アデラもキニと付き合っていたが別れたらしい。

キニはベアトリスとアデラとエストレア、カルメンを知らないという。
アデラは14日、ベアトリスは15日、姉妹は17日
77年、78年、80年の祭り期間中は町が騒がしく人が消えても気付かれない。
キニと出会い町を出たがっていたが、モテる男が人を殺すとは思えない。

ペドロはジャーナリスト(マノロ・ソロ)にネガの真相を調べるよう頼む
ネガは珍しい輸入品なので、使う人間は限られているという。

葬儀の日、ロシオは「娘の通帳を見つけた、夫が車に隠していた」と言う。
ロドリゴは娘たちを町から出したくて借金をしたが返せずと言い訳をするが、ロドリゴをフアンが殴り、暴力で自供を引き出すが、妙に慣れたように見える。
ロドリゴはヘロインの売買をしていたと自白する。
売上金は使い込み、取り立てが来て金目の物を持っていかれた。

キニを尾行すると猟師宿に入る。
白い帽子の男も宿に入り、フアンは何者かに殴られ気絶する。

ペドロとフアンはキニを呼び血液検査をする。
その帰り道にフアンとペドロはライフルで銃撃される。

キニの血液は犯人と一致しない。
判事アンドラーデ(フアン・カルロス・ビリェヌエバ)が「国が民主主義に変わったので、許可をとってから逮捕しろ」と言う。
この言葉は大事で、ペドロは国が変わったことを理解しているが、フアンは理解できていないのかもしれない。
だから暴力で自供を引き出そうとしたが、何か政府系の人間の匂いがする。

キニと一緒に猟師宿に入った女性マリーナ(アナ・トメノ)に白い帽子の男のことを聞くが知らないという。
彼女は怯え、厚着で体の傷を隠している。
何かを隠している。

フアンとペドロは猟師宿を再び訪問し、ペドロはネガに写っていたのと同じ装飾品に気付く。
フアンは猟師宿の女主人カーサ・ソト(メルセデス・レオン)を羽交い締めにし、ペドロはこの様子を不思議そうに見ている。
やっぱり何かを気付いたようだ。

帰りにヘロインの元締めのところに連れて行かれる組織のボスと会うことになる。
彼は姉妹の父親に盗まれたが、娘は殺していない。
アンへリタに会わせたが、彼女の旦那のフェルミンが農場にいて、霊能者でないというが、話が噛み合ってない。
TSUTAYAのDVDなんだが、字幕がおかしいのではないかな。
見ていてたまに思う。

ボスは情報が欲しければ見返りを出せ、プンタルの監視を外せとの要求するが、プンタルって誰なん?
彼が言うには、少女たちが消えた日にヘロインが届くのを待っていると男が井戸に袋を投げた。
顔は見ていないが普通の男で、時間は朝5時、車種は白色のディアーヌ6。
リアウィンドウに「長髪で帽子をかぶった女」のステッカーが貼ってあるという。

帰ろうとするとアンへリタがフアンに「すぐそばに死者があなたを待ち受けている」と言うが、あんたは霊能者と違うんやろ?と。
これも字幕ミスなんかな。

フアンとペドロが訪ねると、アデラの母がマラガのホテルの毛布をセバスティアンからもらったという。
アデラはセバスティアンがキニを忘れさせてくれたと言っていた。

フアンの部屋に「明日の七時半に一人で十字架へ」というメモが届く。

ペドロはジャーナリストに会う。
例のネガは販売店は一軒、セルビアの店で毎月注文している人間がいる。
名前はキニで、現像もその店でしているが中身は秘密。
写真には撮影者の影が写っているが顔は分からないが、調べるには原本のネガが必要。
ジャーナリストはフアンが治安部隊にいたことを指摘する。
彼はフランコ政権の秘密警察に所属し、デモに参加した少女らを殺し「100人の少女虐殺」の異名を持つ。

十字架で待つフアン。
黄色いディアーヌ6に乗ったロシオがマリーナを連れて現れる。
マリーナの話では、キニと猟師宿で事を済ませた後、裸でベッドに縛られると別の男が入ってきた。
顔は見ていないが「高価なコロンの香りと柔らかい手」だと。
そして写真を撮られ、誰かに話せばばらまくと脅された。
娘が殺された夜、彼女はキニと一緒ではなかった、だが判事の前では証言できない。
ロシオはフアンに復讐しろと言ってるように見える。

セバスティアンはホテルを辞めたが私物が残っているので、ペドロはマラガのホテルでセバスティアンの私物を調べる。
彼は少女に執着する児童性的虐待者だった。
それがばれ姿を消し、2年もの間町に戻っていない。

フアンは労働争議の現場に行き、怪しい男コラレスと会い「高価なコロンの香りと柔らかい手」だという感触を得る。
後ろ姿が猟師宿で見た男と似ている。

ペドロは「長髪で帽子をかぶった女」のステッカーがある車を見つけて追うが見失う。

判事は、コラレスの車はディアーヌ6ではない「明朝、出頭させる」と言うが、そんなことは頼んでいない。
ペドロはコラレスとキニの血液検査と尋問を要求するが受け入れられない。

盗聴した電話を聞いてホシはセバスティアンと確証し、905433は猟師宿の電話番号。
二人は再び猟師宿へ行き、カーサを今度はペドロが締め上げるが、警備員の名前はアントニオ、セバスティアンのことは知らないと嘯く。

フアンがナイフとペンチで拷問されて死んだエストレアとカルメンの話をすると、警備員の名はセバスティアンと真実を語りだす。
彼の母が友達なので雇用した、「身を隠したい」と言っていたが理由は聞かなかった。
コラレスのことも知っている。

そしてセバスティアンは猟師区の廃屋にいることが分かり、直行すると「廃屋には少女たちの雇用契約書」があった。
セバスティアンは肝心の入れ替わりで逃げられ後を追う。

追いかける途中、マーシュランドでミゲルが撃たれ、フアンも撃たれるが、セバスティアンはフアンの手で殺される。

ラストでフアンの素性が分かる。

 

 

 


 

感想

事件は解決し、恐らくキニとセバスティアン、コラレスの3人が犯行に関わったが、判事が気にしていたコラレスへの言及がない。
被害者はアデラ、ベアトリス、エストレア、カルメンの4人
マリーナは生存。
ベアトリス、エストレア、カルメンは雇用契約書を持ち、町を出たかった。
そして拷問されていた。

ということは性的虐待と拷問は別の犯人の犯行だったのかもしれない。
コラレスも労働争議に関与していたので判事は何かと気を使った。
裏には私達には分からない、フランコ死去後のスペインの政治状況が影響しているのではないかな
政治的なメッセージが随所にあったので。