母親の復讐劇にも見える「幸福の国」 | 三匹の忠臣蔵

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日々是好日。
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自殺しようとして生き残ったミンスと、彼の代わりに犠牲になったジヌの母親、それぞれの葛藤を通じて、最小限の情報で妬みや嫉妬、悲しみと絶望からの赦しはあるのかを描いた、ハードで暗くて重たい映画。
当たり外れが多い「STS entertainment」配給作品だが、これは当たり。

ジヌの命日に毎年彼の家を訪問するミンスだが、ミンスの妻は彼の過去を知らない。
ミンスを温かく迎えるジヌの母親は、ミンスを息子ジヌの代わりにしているようにも見える。

母親はミンスを玄関で迎える時にニコニコと「息子」と呼んでたが、どんな気持ちなんだろう、一瞬ぎょっとしたけど方向性は分かった。
一方、父親は見るからに生きる屍。

ミンスもミンスで、一度だけなら美談になるけど、毎年毎年8年間もジヌの命日に訪ねている。
母親の恐ろしい復讐のようにも見えるが、根比べにも見える。

ジヌには恋人セヒがいて、彼女は韓国を離れることになるが、母親はセヒに「結婚もして子も産んで、ジヌを忘れて幸せになれ」と言う。
”もし生きていたら”が話の端々に埋め込まれていて、ミンスからしたら生き地獄でしかないシチュエーション。

母親は祭祀が終わるとミンスに泊まっていけというが、ミンスは「妻をめとり子ができた」と伝える。
するとジヌのことを「妻に秘密にしているのか」「話さないのか?」と問い、子が生まれたら連れてきたらいいと言う。

ミンスはジヌが自殺をしようとした自分を救い命を落としたという負い目を心に刻んでいるが、自分の暮らしも大切にしたい。
声には出さないが、”もしジヌが生きていれば””あなただけ幸せになっても良いのか”と問いかけているように聞こえる。

こんなことをして”誰が幸せになるのか”と娘は言うが、母は聞く耳を持たず、それどころかミンスはジヌの部屋で寝かされる。
「死にたかった俺を勝手に助けて、なぜ俺を責める!」の救いようのないラスト、幸せの国を探してたんかな。

母親役のイェ・スジョンは目で演技をしていて、圧倒的な存在感を見せている。この人はやらしいとずるいの境界線を走らせると上手い。
父親役のキ・ジュボンもセリフがないけど表情で演技をしていて、ただの屍ではない。

久しぶりのアマプラヒットかも。