ユンとフンと書いてあったので、てっきり男女の物語かと思ったら、男同士の友情と愛の物語。
借金の取り立て屋ユンと、ベトナムの伝統歌舞劇「カイルオン」の花形役者リン・フンが、神が宿る伝統楽器「ソン・ラン」を通じて心がつながっていく様子が艶やかでとても美しい。
ただ、ラストは意表を突かれた。
リン・フンへの借金の取り立てをきっかけに、再びカイルオンを見るようになったユンは、フンの姿に何を見て、何を感じたのか。
劇を見た後、ラジオから流れるフンの歌を聴くユンは、忘れていた自分の夢を思い出したのだろう。
飲み屋で客に絡まれたフンを助けるユン。
ユンの喧嘩姿にどことなく拳法っぽさがあるのがわかる。
そしてフンはユンの家に泊まることになる。
テレビゲームをやっているシーンは笑ってしまったが、このテレビゲームが2人の壁をなくす。
ちょろっと性描写が出てくるが、これぐらいがちょうどいい。
共産主義のベトナムにも借金の取り立てはあり、タバコを本数売りしているのも昔の日本みたい。
カイルオンが終わった後にアップテンポの「蛍の光」が流れるのは笑ったが、映画のいいところはその国の人々の暮らしがわかること。
共産主義だろうが何だろうが、市井の人々の暮らしは変わらない。
ユンの父親はカイルオン出身のヤクザでソン・ラン奏者だった。ユンは母親に対する怒りから芝居を捨てた。
手紙を歌って初めて見た。
歌でも伝えるって、なんか朝鮮半島のパンソリに似てる。
言ってみればオペラもそうだし、ソン・ランの調べに合わせて歌う、響きにのって歌う歌詞がストーリーそのものなんだが、どこまで意を伝えているのかは気になる。