2001年に実際に起きた「テチャン号事件」を基にした舞台「海霧」を、ポン・ジュノがプロデュースして映画化した作品。
乗務員役の役者さんの演技が、極限状態の緊迫感をリアルに表現している傑作。
原題は「海霧」で、海霧は暖かく湿った空気が冷たい海面に接することで生じるが、海水は冷たいまま。
脱北者にとっては希望と絶望が混じり合う境界という意味なんだろうか、知らんけど。
プロローグに登場する漁師たちの姿を演じる俳優たちがホンマモンに思えてくる。撮り方。見せ方が本当に上手い。
ラストシーンで、自由を求めて船を脱出する者と、古い船に執着して捨てられずに残る船長との対比をエンタメに仕上げてるのはさすが。
何より、あの状況で真っ当な判断ができたのが高卒のトンシクだけだった訳で、この差が何を意味するのかは、「多分、そういうことかな?」と、見る人一人一人で受け止め方が違うとは思う。