二十代前半。
同級生の結婚式が終わり、仲間と次で飲もうとお店探しで大阪第3ビルへ。
ふらふら歩いてると、白衣を着たおばちゃんが両手を広げ、仁王立ちで通せんぼ。
呆気に取られる我々に大きな声で「あんたらちぃー抜いて行き!」。
声こそ出さんけど「なんやこのおばはん」と驚く我々に「あんたら若いねんからちぃー抜いていき!」。
こちらは酔ってるのも手伝って全員なんやねん状態。
そんな雰囲気はそっちのけで「あんたら若いねんからちぃー抜いていき!」と鬼の形相。
輸血用の血液が足らない
話を聞くと輸血用の血液が足らないとの事。
更に「こんなに簡単にできる社会貢献はないよ」とコンコンと説教される始末。
あまりの迫力に圧倒され、「おばちゃん僕ら酒飲んでるから来週来るわ」と言うと「本当に来るんやな、絶対おいでや!」「来ぇへんかっやら家まで行くで!」って「家知ってんのんか!」の言葉はぐっと飲み込んで、「ちぃー抜きにくる」ことに念を押されて解放。
当時、素直で真面目な私は、1週間後に約束通り献血に行ったけど、おばちゃんには会えず。 その後 2~3回は行ったかな。
一緒にいた友達も、何人かは行ったらしいけど誰もおばちゃんには会えず。
時は流れ、武蔵のビジネスプラザに事務所を構えると、献血バスと出くわすことが多くなり、思い出したように献血再開。
献血の妖精には会えなかったが...
今思うと、おばちゃんにちゃんと「約束守ったよ!」と言いたくて通ったと思う。
普通の看護婦さんが義務感なのかは分からんが、必死に献血を集めてることに対する共感と、申し訳なさと、世の中捨てたもんじゃない、と教えてもらったことに感謝の気持と。
誰も会えなかった看護婦のおばちゃんは「献血の神さま」やったんかな。
若かったら「献血の妖精」やったろうに。(笑)
ということで、あれから40年。
今じゃメールで予約もできて楽チン楽チン。
と言うことで、今日もあたしゃちぃを抜いた。