文筆家、エッセイスト、絵本原作者の木谷美咲です。
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先日、松本零士さんがお亡くなりになったニュースを見て、藤子不二雄のF先生が亡くなった時のことを思い出しました。
ドラえもんの映画を映画館で見て、小さな子たちが熱狂している姿に、
「作者が亡くなっていても、ドラえもんは生きて愛されている」
と、不意に込み上げてくるものがあった時のことを。
たとえ作者の肉体は滅んでも、作者の物語やキャラクターは死なず、ファンに愛されている限り、残り続ける。
作品が生き続ける限り、作者の魂は永遠に生き続ける、そんな風に思います。
というのも、本の著者に会う機会がある時に、
必ずといっていいほど、作者は本のイメージそのままで、作品というのはその人なんだと思うことが多いからです。
タレントさんの場合は、TVで見ている時と実際にお会いした時と印象が異なることがあるのですが、本の場合はまずありません。
(TVは出演者の作品ではなく、番組制作者の作品だからでしょう)
松本零士さんの代表作『銀河鉄道999』、大好きな作品で繰り返し読んでいました。
アニメは再放送を見た覚えがあります。
メーテルの人気は絶大だった。
並んで好きだったのが『男おいどん』です。
九州から上京して、安アパートの四畳半に下宿する主人公おいどんこと大山昇太の日常の話です。
容姿に恵まれず、金もなく、友もなく、モテず、でも時間だけはたっぷりある。
割と汚い話が多く、不潔なおいどんは、風呂に滅多に入らず、押し入れに穿いたサルマタを放置してサルマタケという謎のキノコを生やすハメになります。そのサルマタケをラーメンに入れて食べるという無茶苦茶さ。
このサルマタケのモデルが実在したというので記事にしたことがあります。
こんな無茶苦茶な主人公おいどんですが、読んでいるときに共感を覚えていました。
私は男ではありませんし、四畳半に住んだこともないのですが、
劣等感を持ち、何者にもなれずに苦しむおいどんの気持ちに親しみを感じます。
自分でもふしぎですが、おいどんに似た心根を心の奥に持っているのです。
自分の中でも確かにおいどんはいる!
境遇は違うのにそう感じさせてしまうのが、作品の力なのかもしれません。
おいどんの心情描写は、実に率直で普遍性のあるものでした。
下宿先のおばーさんにタテだかヨコだかわからないビフテキを焼いてもらう下りも好きでした。
おいどんが「タテだかヨコだかわからんビフテキを食いたい!」とリクエストし、おばーさんが焼いてくれる名場面です。
ビフテキって言い方がまた古めかしくて良いです。
『銀河鉄道999』にもステーキがたびたび登場します。鉄の皿の上でじゅうじゅうと音を立てて、バターがのっているのが美味しそうで
松本零士さん作品もきっとずっと生き続け、松本零士さんの魂は生き続けるのでしょう。
ご冥福をお祈りします。