やしの木文筆家、エッセイスト、絵本原作者の木谷美咲です。やしの木やしの木

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リクルートの食のウェブマガジン「メシ通」のワクサカソウヘイさんの連載に出演協力し、

その記事が公開されました。

 

タイトルは「クリティカル・フードアタック」

 

未だ食べたことのないものをワクサカソウヘイさんが食べ、未食の冒険をする連載で、

これまでにシュールストレミング、マンボウの回があり、

今回のテーマは花食ということで、呼んでいただきました。

(ワクサカさんからいただいたお写真)

 

花を食べることの機微、心のうつろい、その奥にある官能性をワクサカさんらしさ全開で丁寧に描かれています。

記事はこちら下差し下差し下差し

 

 

ワクサカソウヘイさんは、以前「珍奇植物生態入門」のコラムを担当されていて、

お仕事をご一緒させていただきました。

お名前と文章は知っていましたが、実際にお会いするのは初めて。

執筆業の他、コントの脚本を書かれたり、お笑いのライブのプロデュース(男性ブランコさんの水族館でのライブ等)をされています。

 

お会いする前にワクサカさんを予習せねばとご著書を取り寄せて読んだところ、

最初に手に取った小説『今日もひとり、ディズニーランドで』のあまりの面白さと文章の巧さに打ちのめされました。

 

私が読んだのは文庫版で幻冬舎文庫でしたが、元々はイーストプレスから単行本で出ています。

 

 

 

 

『今日もひとり、ディズニーランドで』は、リストラされた人が公園で鳩をあげる類の現実逃避をディズニーランドで行う話で、

現実逃避の仕方が派手でアグレッシブです。

鬱屈した日々かと思いきや、ある地点から逆方向に振り切れてハレーションを起こす、そんな内容で、

特に好きなシーンは、シンデレラ城でのおひとりさま同士の戦い。

ディズニーでおひとりさまはシングルライダーというそうで、それだけで笑ってしまうのに

シングルライダー同士戦うことになります。

しまいには、ディズニーを擬人化して、USJに浮気してみたり。

作品の核にあるのは虚しさなのに、そこから全速力で逃避しているうちに加速がついて、どんどんとんでもない方向にいくおかしさにハマりました。

躁転したつげ義春と思いながら読んでいたのが、新刊『出セイカツ記』(河出書房新社)のテーマは、ついに衣食住からの逃避行で、やっぱりと思いながら読みました。第三章の「石を売る」も面白かったのですが、第四章の「自分のイニシャルの服を着る」が圧倒的な面白さで、サザエさんの中島くんが自分のイニシャルNの服を着ていることを引き合いに出し、Wの服を着て、ファッションを記号化して安心する話、自分のイニシャルのセーターを着て鏡に映っているワクサカさんの写真を見て、「もう無理」と笑いました。

これ、何度でも笑えます。嫌なことがあったときに見ても笑う自信があります。

 

 

他作品も読んで思ったのは、ワクサカさんのテーマは基本的に全速力の逃避行で、

逃避行が過激になっていくさまを魅せる作品なんですね。

逃避行の原動力は外圧への不安なのかなと。ちゃんとした大人にならなければならない不安、

男性であらなければならない不安、生活し続けなければならない不安、

出発点はつげ義春なのに、逃避行が次第に過激になりおかしなことになっていく、その様子を笑わせるという。

 

あと、心理描写の細やかさにも感動しました。

細やかなのにくどくない、緻密な文章です。

 

 

『ふざける力』にいただいた「ふざけ続けろ!」がお気に入りです。

最近ふざけていないことに気づきました。

面白いことをしたいなら、その通り、ふざけ続けないとですね。