なぜ声楽とヴァイオリンのジョイントコンサート?、そう思われた方も多くいらっしゃったんだと思いますが、理由はトークでご説明頂きましたし、まあそれにしても素晴らしいジョイントリサイタルでした。ソロのお二人のことを書かせて頂く前に、ピアノを弾かれた越知晴子さんの才能とピアノの素晴らしさにも触れない訳には行きませんね。ソリストと同じ息遣いで以ってともに音楽を紡いで行かれる献身的な作業は、いわゆる「伴奏」と言う域を超え、文字通りの「共演」を聴かせて頂きました。「良い音楽」を判っていないと、こういう演奏は出来ませんよね。瀧村さんのヴァイオリン、やはり超一級品です。モーツァルトでの安定した技巧と音楽的な余裕、そしてカデンツァ風の場所の充実ぶりには、思わずのけ反ってしまいました。イザイの無伴奏、ここでも折り目正しさと技巧の冴えに加え、曲が持つ音楽的な「香気」が立ち上り、私が思うこの5番の理想に近い演奏を聴かせて頂きました。そしてラヴェルのソナタ。この曲は若い人も良く取り上げる手がけやすい曲なんでしょうが、これまでこの曲の演奏に感心した試しがありませんでした。ある時は行き過ぎた過剰な雰囲気で聴かせたり、あるいは局所局所を強調し過ぎたりと、全3楽章をひとつの楽曲としての統一感、様式感で聴かせきってくれた演奏に接したことが無かった訳です。瀧村さんのラヴェルですが、基本的には非常に慎ましく抑制気味であったと思いますが、押しつけがましい自己主張を排除した清廉さ、それが逆にこの楽曲自体が隠し持つ魅力の一端を浮かび上がらせてくれていたように思います。(「曲を弾く」と言うのは、そういう作業が第一義なのではと常々思っていますので、今日はとても満足した次第です。) 彼女のもともと持つ音楽性に加え、彼女の人間的な慎ましさが、このラヴェルのソナタと言う楽曲に対してそのような演奏をさせたのではないかと思うんですよね。彼女はそれを「意図的」にやっている節もあり、非常にクレヴァーなヴァイオリニストだとも感じました。楽譜の読みももちろん深いのですが、意外に過多な思い入れをされておられないのが彼女の特徴で、ブレ・隙の無い技巧を武器にしながら曲そのものが持つ良さを十分に表出させられる稀有なヴァイオリニストだと思います。松原さんの声楽も心に染み入りました。曲の持つそれぞれの様式を描き分けられる声楽家は少ないですが、彼は今日の多彩なプログラムをその塊り毎に見事に唄い分けておられたと思います。オペラと言うよりは、リート向きですかね。2曲のアンコールも味わいがありました。「ダニーボーイ」の編曲初演も興味深かったですね。瀧村さんはいよいよ来月から読売日本交響楽団の2ndvnトップとして本格的なプロ活動を開始されます。期待大ですね。彼女は間違いなく日本を代表するヴァイオリニストとなる逸材でしょう。オケの方が落ち着いたら、並行して充実したソロ活動もお願いしたいものです。
今日弾かれた曲は私も随分前に勉強しました。持参した楽譜に快くサインをして頂きました。瀧村依里さんの今後益々のご活躍をお祈りしています。陰ながら応援しています。















