音楽と競馬、思ったことを書いて行きます -13ページ目

 

 

塚本 芙美香さんのリスト、部分的に大きな傷が二か所程あったように感じましたが、それを除けば、この曲は、彼女の音楽性に非常に良くマッチしていて、良い仕上がり具合でした。かなり攻めて行った厳しい音楽ではありましたが、良く練り込まれた踏み込んだ内容で、聴き応えも十分でしたし、ご本人も、きっと大きな手応えを感じられたことでしょう。

12月に行われる「いずみホール」でのリサイタルでも、この日と同じリストのピアノソナタを弾かれますが、驚くほどの名演が期待出来る、そんな予感のする今日の演奏でした。芙美香さん、お疲れ様でした。

本日開催されますので、改めて告知させて頂きます。

 

日頃、仲良くさせて頂いている、ピアニストの松尾 紗里さん・ヴァイオリニストの福澤 里泉さん達で結成されたピアノトリオ「Astres」が、10月4日に第2回の公演を行います。詳しい内容は、掲載させて頂いたチラシ等でご確認下さい。

チラシに掲載されている、ラヴェルとメンデルスゾーンのトリオの他に、バッハ(楽曲は不明)を演奏されると言うことでしたが、合っていますでしょうか。

私も聴きに伺う予定でしたが、急な会議と重なってしまい、残念ながら伺えなくなってしまいました。ひとりでも多くの方にお聴き頂きたいと思い、この素晴らしいトリオの公演の告知を、掲載させて頂きました。

 

知人が何人か出場したこともあり、聴きに伺いました。

 

審査員の先生方ですが、弦楽器を専門にされる方が入っておられません。また、個人的には、もう少し若い方が入られても良いのでは、と思います。他のコンクールもそうですが、いつも同じような審査員ですと、毎年の審査傾向も似たようなものになりますし、思い切って現代曲に取り組まれた出場者が評価され難いと言うような印象もあります。現在、舞台で活躍されている方もぜひ入れて欲しいですね。

 

<ピアノ部門>は、予選からハイレヴェルと感じていまして、本選に出場された3人の演奏も、それぞれの個性が感じられる本選でした。あくまでも個人的な印象と言うことになりますが、岡本 千佳さんの出来が素晴らしく、意気込みも十分で、大きな舞台に臆することなく、彼女のいつも通りの歯切れ良い鮮烈なデュティユーの演奏が聴かれました。中村 太紀さんは、この日は少し慎重になっておられたのでしょうか、特に第1楽章では思い切りと言う点で物足りなく、デュナーミクも平凡に聴こえましたし、第3楽章では幾分音楽的に平板に感じ、予選の時の方が良かったかなと言う印象。ペダルを踏む足音も、少し耳ざわりだったでしょうか。中安 修也さんのラフマニノフ、抒情性に富む美しい演奏でしたが、曲の持つゴージャスで劇的な側面の表現に於いて、少しこじんまりしていたと言うような感じでした。岡本さんが「最優秀賞」を受賞されるに相応しいと感じましたが、結果は3人ともに「優秀賞」と言う結果に終わりました。

 

<管弦打楽器部門>は、本選出場者が管楽器の方ばかりと言う寂しい状況。竹内 久力さんのクラリネット、ペンデレツキでの幅の大きい表現とレヴェルの高い技巧、シュポアでのふくよかな音楽が客席にも良く届き、なかなか聴くことの出来ないような、大変素晴らしい演奏と感じましたし、きっとご本人も満足されたのではないでしょうか。吉田 由希乃さんのクラリネット、大きな舞台に緊張されている様子が感じられ、少し気の毒に思いましたが、楽器の調子もあまり良くなかったこともあるのか、音楽的な表現と言う点で少し物足りなく、予選の方が伸び伸びと吹けていたんではないでしょうか。峯脇 千春さんのサクソフォン、ピアノと作り上げる微妙な音感の表現は大変聴き応えがありましたが、幾分分析的・微視的な演奏と言う印象もあり、更に大きな意味での「音楽」をお聴きしたかったと言う感じでしょうか。竹内さんが「最優秀賞」を受賞されるに相応しいと感じましたが、結果は3人ともに「優秀賞」と言う結果に終わりました。

 

<声楽部門>、今年もソプラノの方ばかりと言うことに。矢代 あすみさんは、独特の雰囲気をお持ちの方ですが、歌唱そのものが多少不安定で、音程のズレも気になります。息持ちにも更に向上の余地があるように感じました。フランス歌曲は彼女に良く合っていますよね。中島 奈津美さん、ご自身の声質に良く合う楽曲を唄われ、迫力のある舞台を聴かせて頂きました。音楽にまっすぐ向かう姿勢は素晴らしいですが、音楽的なゆとり・余裕のようなものがもう少し歌唱の中に感じられたら、更に映える舞台となっていたように思います。ピアノを弾かれた後藤 真利子さん、的確なサポート、音楽的にも十分に聴き応えがあり、単なる伴奏と言う域を超えた演奏を聴かせて頂きました。金治 久美子さん、歌唱そのものの出来は、前に唄われた中島 奈津美さんと同じくらいの印象でしたが、彼女の場合、予選の時以上に、この日の舞台に臨まれる「意気込み」を強く感じ、凝った衣装・演奏中の仕草などで以って、音楽を聴き手に懸命に伝えようとする姿勢が大変素晴らしいと感じました。歌い手・聴衆共に集中力を保てるような長いR・シュトラウスのアリア1曲のみを選曲されたのも見識でしょうし、それを見事に唄い切った彼女の頑張りは見事でした。ピアノの濱野 基行さんの演奏も良かったですね。この音楽に見合う知的さがあり、音楽が良く整理され、テクニック面でも余裕があり、素晴らしいピアニストと感じました。結果、「最優秀賞」を金治 久美子さんが受賞され、他のお二人が「優秀賞」と言う結果となりました。また、中島 奈津美さんが「聴衆賞」を受賞されました。

 

表彰式などで、演奏に対する講評が聞けないと言うのは、さて、どうなんでしょう。そこが最も大事なところなのではないでしょうか。議長などは、表彰式が終わって、そそくさと真っ先に帰って行かれましたし・・・。

 

出場された皆さん、おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。今後の更なるご活躍を願っております。

出演される方に招待券をご用意頂き、聴きに伺いました。

後半に出演された3人のお姉さん達は、経験値も違いますし、やはり堂々と貫録があり、もちろん演奏も素晴らしいですよね。

最後にピアノを弾かれた坂本 彩さんは、昨日お聴きした辰野 翼さんと同じく、来月開催される「ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門」に出場されます。その予選で弾かれる予定のリストの仕上がり具合が楽しみで伺いましたが、9分以上の仕上がり。リストの音楽を弾く必然性が感じられ、作品の輪郭が浮かび上がり、彼の書いた音楽がどのようなものなのかが、手に取るようにわかります。弾かれる音楽には、大きな意味での普遍性を感じ、ほんのわずかにも自己流・独りよがりの音楽が聴かれる時間はありません。常に深く思索的で、繊細であっても弱音時に決して音楽や音が痩せてしまうこともありません。彼女の持ち味でもある「芯のある太い音」が、弱音時でも十分に聴き手に、その音楽の意味合いを伝えて来ていたように思います。慎み深い歩みの中にも、彼女が持つ音楽的な素養が十分に聴こえ、たった12分ほどの短い時間ではありましたが、一音たりとも聴き逃すことの出来ない、充実した時間を経験させて頂きました。これが、ひとつの「大きな壁」を超えた、国際コンクール本選出場者常連の方の実力・底力と言えるのかも知れません。惜しむらくは、この日置かれていたピアノそのもののポテンシャルが、彩さんの演奏に耐えられるようなものでは無かったこと、また、特に高音の調律が良く無かったことで、彼女の望むような響きが、出て来なかったことでしょうか。これはとても残念でした。

彼女の弾く、この曲を含む巡礼の年・第1年「スイス」の一群が、ジュネーヴの地で、多くの聴衆・審査員の心に届くことを、遠い日本の地から願っています。

この秋開催される「ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門」開催を前に、日本人のチャレンジャーの皆さんも、コンクールで弾かれる曲の弾き込みを、お客さんを迎えながら活発に行っておられます。

パリ在住の辰野 翼さんもそのおひとりで、日本への一時帰国を期に、この日のコンサートが開かれました。彼の演奏は、これまで度々お聴きしていますし、先日も、偶然にも某コンクールで聴かせて頂きました。

前半のソロ、大きく異なる個性を持っているふたりの作曲家の作品ですが、優れたペダリング・繊細なタッチにより、音色を見事に描き分けられた秀演でした。特にシューマンは、彼の音楽性に良くマッチしているんでしょうか、とりわけ素晴らしい演奏でした。

後半は、彼の先輩にあたる松尾 京子さんを迎え、2台ピアノによるシューマンの協奏曲。まあこれは本当に難しい曲ですよね。第1楽章のゆったりするテンポの部分などは、この日のピアノによるオケパートでも幾分埋没気味に聴こえるような印象もあり、また、第3楽章の独特の拍節感の部分(ヘミオラの部分ではなく、1拍ずれて聴こえるようなところ)では、もう少し聴き手側に3/4拍子を意識させないよう(「拍」感を感じさせないよう)な、シューマンらしい曲想の「波」「流れ」のようなものの中から、自然と音符・音楽が浮かび上がるような、まあ言葉で書くのは難しいんですが、これから更に弾きこんで行かれ、彼らしい音色に拘ったところまで踏み込むことが出来れば、もっと「大きな音楽」を聴かせてくれるでしょうし、まだまだこの曲の演奏には「伸びシロ」がありそうですよね。まだ本番までには時間もありますし、この日が初出しと言うことを考えれば、合格点を付けられる演奏だったでしょうか。

 

辰野 翼さんの、ジュネーヴのコンクールでのご健闘、そして良い結果を、心から願っております。