

知人が何人か出場したこともあり、聴きに伺いました。
審査員の先生方ですが、弦楽器を専門にされる方が入っておられません。また、個人的には、もう少し若い方が入られても良いのでは、と思います。他のコンクールもそうですが、いつも同じような審査員ですと、毎年の審査傾向も似たようなものになりますし、思い切って現代曲に取り組まれた出場者が評価され難いと言うような印象もあります。現在、舞台で活躍されている方もぜひ入れて欲しいですね。
<ピアノ部門>は、予選からハイレヴェルと感じていまして、本選に出場された3人の演奏も、それぞれの個性が感じられる本選でした。あくまでも個人的な印象と言うことになりますが、岡本 千佳さんの出来が素晴らしく、意気込みも十分で、大きな舞台に臆することなく、彼女のいつも通りの歯切れ良い鮮烈なデュティユーの演奏が聴かれました。中村 太紀さんは、この日は少し慎重になっておられたのでしょうか、特に第1楽章では思い切りと言う点で物足りなく、デュナーミクも平凡に聴こえましたし、第3楽章では幾分音楽的に平板に感じ、予選の時の方が良かったかなと言う印象。ペダルを踏む足音も、少し耳ざわりだったでしょうか。中安 修也さんのラフマニノフ、抒情性に富む美しい演奏でしたが、曲の持つゴージャスで劇的な側面の表現に於いて、少しこじんまりしていたと言うような感じでした。岡本さんが「最優秀賞」を受賞されるに相応しいと感じましたが、結果は3人ともに「優秀賞」と言う結果に終わりました。
<管弦打楽器部門>は、本選出場者が管楽器の方ばかりと言う寂しい状況。竹内 久力さんのクラリネット、ペンデレツキでの幅の大きい表現とレヴェルの高い技巧、シュポアでのふくよかな音楽が客席にも良く届き、なかなか聴くことの出来ないような、大変素晴らしい演奏と感じましたし、きっとご本人も満足されたのではないでしょうか。吉田 由希乃さんのクラリネット、大きな舞台に緊張されている様子が感じられ、少し気の毒に思いましたが、楽器の調子もあまり良くなかったこともあるのか、音楽的な表現と言う点で少し物足りなく、予選の方が伸び伸びと吹けていたんではないでしょうか。峯脇 千春さんのサクソフォン、ピアノと作り上げる微妙な音感の表現は大変聴き応えがありましたが、幾分分析的・微視的な演奏と言う印象もあり、更に大きな意味での「音楽」をお聴きしたかったと言う感じでしょうか。竹内さんが「最優秀賞」を受賞されるに相応しいと感じましたが、結果は3人ともに「優秀賞」と言う結果に終わりました。
<声楽部門>、今年もソプラノの方ばかりと言うことに。矢代 あすみさんは、独特の雰囲気をお持ちの方ですが、歌唱そのものが多少不安定で、音程のズレも気になります。息持ちにも更に向上の余地があるように感じました。フランス歌曲は彼女に良く合っていますよね。中島 奈津美さん、ご自身の声質に良く合う楽曲を唄われ、迫力のある舞台を聴かせて頂きました。音楽にまっすぐ向かう姿勢は素晴らしいですが、音楽的なゆとり・余裕のようなものがもう少し歌唱の中に感じられたら、更に映える舞台となっていたように思います。ピアノを弾かれた後藤 真利子さん、的確なサポート、音楽的にも十分に聴き応えがあり、単なる伴奏と言う域を超えた演奏を聴かせて頂きました。金治 久美子さん、歌唱そのものの出来は、前に唄われた中島 奈津美さんと同じくらいの印象でしたが、彼女の場合、予選の時以上に、この日の舞台に臨まれる「意気込み」を強く感じ、凝った衣装・演奏中の仕草などで以って、音楽を聴き手に懸命に伝えようとする姿勢が大変素晴らしいと感じました。歌い手・聴衆共に集中力を保てるような長いR・シュトラウスのアリア1曲のみを選曲されたのも見識でしょうし、それを見事に唄い切った彼女の頑張りは見事でした。ピアノの濱野 基行さんの演奏も良かったですね。この音楽に見合う知的さがあり、音楽が良く整理され、テクニック面でも余裕があり、素晴らしいピアニストと感じました。結果、「最優秀賞」を金治 久美子さんが受賞され、他のお二人が「優秀賞」と言う結果となりました。また、中島 奈津美さんが「聴衆賞」を受賞されました。
表彰式などで、演奏に対する講評が聞けないと言うのは、さて、どうなんでしょう。そこが最も大事なところなのではないでしょうか。議長などは、表彰式が終わって、そそくさと真っ先に帰って行かれましたし・・・。
出場された皆さん、おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。今後の更なるご活躍を願っております。
