この秋開催される「ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門」開催を前に、日本人のチャレンジャーの皆さんも、コンクールで弾かれる曲の弾き込みを、お客さんを迎えながら活発に行っておられます。
パリ在住の辰野 翼さんもそのおひとりで、日本への一時帰国を期に、この日のコンサートが開かれました。彼の演奏は、これまで度々お聴きしていますし、先日も、偶然にも某コンクールで聴かせて頂きました。
前半のソロ、大きく異なる個性を持っているふたりの作曲家の作品ですが、優れたペダリング・繊細なタッチにより、音色を見事に描き分けられた秀演でした。特にシューマンは、彼の音楽性に良くマッチしているんでしょうか、とりわけ素晴らしい演奏でした。
後半は、彼の先輩にあたる松尾 京子さんを迎え、2台ピアノによるシューマンの協奏曲。まあこれは本当に難しい曲ですよね。第1楽章のゆったりするテンポの部分などは、この日のピアノによるオケパートでも幾分埋没気味に聴こえるような印象もあり、また、第3楽章の独特の拍節感の部分(ヘミオラの部分ではなく、1拍ずれて聴こえるようなところ)では、もう少し聴き手側に3/4拍子を意識させないよう(「拍」感を感じさせないよう)な、シューマンらしい曲想の「波」「流れ」のようなものの中から、自然と音符・音楽が浮かび上がるような、まあ言葉で書くのは難しいんですが、これから更に弾きこんで行かれ、彼らしい音色に拘ったところまで踏み込むことが出来れば、もっと「大きな音楽」を聴かせてくれるでしょうし、まだまだこの曲の演奏には「伸びシロ」がありそうですよね。まだ本番までには時間もありますし、この日が初出しと言うことを考えれば、合格点を付けられる演奏だったでしょうか。
辰野 翼さんの、ジュネーヴのコンクールでのご健闘、そして良い結果を、心から願っております。


