私の最もお気に入りのピアニストのおひとり、森本 美帆さんのリサイタルにお邪魔しました。公演当日(3月21日)は、「第4回高松国際ピアノコンクール」の第3次予選・2日目と日程が重なってしまいましたが、彼女の「展覧会の絵」をどうしてもお聴きしたく、こちらに伺いました。
彼女のピアノを初めてお聴きしたのは、1年半程前に神戸で開催された、日本芸術センター主催の「第17回日本ピアコンクール」(美帆さんは銅賞受賞。その時の入賞者には、喜多宏丞さん、リード希亜奈さんのお名前も・・・)。本選後の会場外で、初対面にも関わらず、彼女が本選で弾かれたリスト/ピアノ・ソナタの演奏について、私の拙い感想に対し、嫌な顔を一切されずに、耳を傾けて下さった彼女のお人柄に惚れてしまい、その後何度も彼女の演奏をお聴きしながら、今日を迎えております。
ムソルグスキーが作曲した「組曲・展覧会の絵」、この曲には、演奏や解釈に関する私なりの非常に大きな「こだわり」があるのですが、ピアノで弾かれたこの曲の演奏で、これまで満足する演奏をお聴き出来たのは、近藤由貴さんの演奏ぐらいでしょうか。それ以外の方の演奏には、これまで共感を感じたことがありませんし、このブログにも、コンクールと言う場面でお聴きした感想以外、この曲の記事をアップしたことはありません。全曲通して満足させて頂ける演奏は稀で、大変難しい曲です。
これまでお聴きした多くの演奏は、総じて粗かったり、作品に対する共感や思い入れが部分的であり、この組曲を通して感じたい「曲の器の大きさ」「曲に対する敬意や丁寧さ」が大きく欠けており、聴く度に残念な思いばかりしていました。
さて、美帆さんの演奏、100%の満足とまでは行きませんでしたが、彼女なりの美学に溢れる、確信に満ちた、大変素敵な演奏だったように思います。多少感じられた不満のひとつは、演奏に供されたピアノにあります。音がクリアに聴こえ難い、少しくぐもったような音質は、彼女が弾こうと思っていたであろう理想の音色には、少し遠かったように思います。また、この曲に何度も登場する「プロムナード」と言う楽曲に対する考え方に対しても、美帆さんと私との間に、多少なり異なる捉え方がありました。
一方で、この楽曲に対する、大きな意味での「解釈」は大変見事で、決して大袈裟・雑になること無く、一音一音紡ぎながら、大変大きな構築物を築かれて行かれる行程を、目の当たりにしました。
とりわけ、「ブィドロ」で聴かれた音楽的な遠近感・立体感は見事でしたし、「バーバ・ヤガー」では決して急くことなく、丹念に音符を追いながら、ミスタッチなどによって音楽が崩れることなく、音楽的な美感が保たれていたことは、驚嘆に値する演奏でした。アタッカで繋がる「キエフの大門」では、楽譜に書かれている音符の音価をきちっと守りながらも、美帆さんらしい息の長く、大きな音楽によって、感動的なエンディングを迎えました。
良きパートナーでもある辻村周次郎さんが2ndピアノを弾かれた、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」も聴きものでした。個人的にはあまり評価しない楽曲ですが、お二人のメリハリのある演奏は、この楽曲への興味を改めて喚起させて下さり、最も有名な第18変奏では、美帆さんらしいリリシズムが充満し、大変雰囲気のある素晴らしい演奏をお聴き出来ました。
私は都合がつかず、聴きに伺えませんが、今週の土曜日(3月31日)に、西宮の兵庫芸文・小ホールで、この日お聴きした「展覧会の絵」をメインプログラムとした、美帆さんのリサイタルが開催されます。前半は、ご留学されていたハンガリーの作曲家の楽曲をお楽しみ頂けます。バルトークやドホナーニの珍しい曲は、ハンガリーの風景を想像させてくれるでしょうし、リストの「ノルマの回想」は、美帆さんの「十八番」の楽曲ですので、彼女の音楽性・そしてテクニックが全開となるような名演が予感されます。
4月29日の祝日には、この日2台ピアノ版で演奏された、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を、オーケストラをバックに披露して下さいます。ぜひ足を運んで頂きたい2つの公演です。
美帆さん、そしてお母様、いつもお声掛け頂いたり、大変親切にして頂き、本当にありがとうございます。リサイタルのご盛会、そしてオーケストラとの素晴らしいご共演を、心よりお祈りしております。

