2017/11/16
思うところがあり、暫く公開することにしました。
2015/8/16
公式サイトで結果が発表されました。
金賞・藤原 晶世さん
銀賞・中村 ゆか里さん、三輪 莉子さん
招聘証・上の3名の方、清水 公望さん、中村 太地さん、瀧内 曜子さん
以上の結果です。
賞金付きの入賞をされた3人の出場者の皆さん、本当におめでとうございました。また、残念ながら入賞は叶いませんでしたが、「招聘証」を受賞された3人の方、どうもお疲れ様でした。私の感想は、下に書かせて頂いた通りで、私の評価も変わりません。結果は結果ですが、審査をされる側の事情、あるいは音楽的な趣味や趣向もあるでしょうから、この結果が皆さんの実力の全てを表しているものではないと思っています。6人の全ての皆さんや、何人かの伴奏のピアニストの方々と直接お話させて頂くことが出来たことは私の大きな財産にもなりましたし、お名刺やリサイタルのチケットを頂いたりと、逆にいろいろとお世話にもなってしまいました。この6人の出場者の皆さんは、本選と同じ会場でリサイタルをされる権利を獲得されました。来年になるとは思いますが、また違った選曲でのリサイタルをお聴き出来る楽しみが出来ました。どんなプログラムで以って、成長された姿を舞台で見せて下さるか、再会出来る日を楽しみに待ちたいと思います。
最後に、関西のヴァイオリニスト、もっと頑張れ、と言いたいですね。
と言うことで、以上で今回のコンクールの記事を閉じさせて頂きます。
いろいろな事情で、授賞式が開催されないとのことで、今夜公式サイトで発表になる最終結果を待ちたいと思います。
コンクールの結果とは別に、第1次予選・第2次予選・本選を聴かせて頂き、私が印象に残った演奏を書かせて頂きます。赤字は特に印象に残った演奏、また赤字斜体は優れた演奏、赤字斜体下線は特に優れた演奏の表記になります。
1番
イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番(第1次予選)
2番
クライスラー/レチタティーヴォとスケルツォカプリース(第2次予選)
イザイ/「サン=サーンスのワルツ形式の練習曲」によるカプリース(本選)
4番
プロコフィエフ/ヴァイオリンソナタ第2番から(第1次予選)
5番
ラヴェル/ツィガーヌ(第1次予選)
バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番から(第2次予選)
ブラームス/ヴァイオリンソナタ第2番(第2次予選)
8番
パガニーニ/24のカプリースから第9番(第1次予選・課題曲)
イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番から(第1次予選)
シマノフスキ/夜想曲とタランテラ(第2次予選)
ブラームス/スケルツォ(本選)
ブラームス/ヴァイオリンソナタ第2番(本選)
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲から第1楽章(本選)
10番
パガニーニ/24のカプリースから第16番(第1次予選・課題曲)
イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番から(第1次予選)
11番
パガニーニ/24のカプリースから第24番(第1次予選・課題曲)
バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番から「フーガ」(第1次予選)
サン=サーンス/序奏とロンドカプリツィオーソ(本選)
14番
パガニーニ/24のカプリースから第11番(第1次予選・課題曲)
エルンスト/夏の名残のバラ(「庭の千草」の主題による変奏曲、第1次予選)
クライスラー/前奏曲とアレグロ(第2次予選)
タルティーニ/ヴァイオリンソナタ「悪魔のトリル」(第2次予選)
15番
バッハ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番(第2次予選)
イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番から(本選)
ショーソン/詩曲(本選)
私が金賞「候補」とさせて頂いた8番の方は、三輪 莉子さん、現在東京芸術大学大学院に在学中の方です。こんな素晴らしいヴァイオリニストの演奏を、日常お聴き出来る関東にお住まいの方は、本当にうらやましいですね。昨日の本選、時間一杯に詰め込まれたブラームスの「宝箱」、こんなにしんどいプログラムをコンクール本選で組まれる方は、そうそういないでしょうね・・・。そこまでご自身を追いつめることが出来る彼女の「演奏家魂」、客席でしっかりと受け止めさせて頂きました。そして、演奏も精魂込めて精一杯に弾かれ、こちらも「快い疲れ」を感じることが出来ましたが、もうこのような無謀なプログラムはやめましょう(笑)。協奏曲は、どうしても聴いてほしいと言う強い思いがおありになったんだと思いますし、演奏も確かに猛烈なインパクトはありましたが、異なる作曲家の作品を弾かれるような選択も、今後は必要かも知れませんね。彼女の特徴は、一言で言うと「音楽を自分で作って行ける人」です。大袈裟になったり飾らないスタイルの一方で、決してご自身の音楽的な趣向を聴き手に押しつけることなく、スケール大きく示されます。技巧にもムラが無く、音には実がびっしりと詰まっています。今後は、曲によって異なる演奏スタイルと言うものの表現を更に突きつめて行って欲しいと願うと共に、オケトラやお仲間との室内楽の経験を通して、大きな括りとしての「音の芸術」を、我々聴衆に聴かせて行って欲しい、そこまで期待の出来る逸材ですね。ピアノを弾かれたのは、同じ大学院に在学中の西村 翔太郎さん、昨日の本選は、ミスタッチが目立ち、多少精彩を欠いていたような印象ですが、彼も優れたピアニストです。おふたりの演奏の様子は、検索すれば「You Tube」で観聴きすることが出来ます。
銀賞「候補」とさせて頂いた15番の方は、地元ご出身の清水 公望さん、現在東京芸術大学大学院に在学中の方です。以前一度どちらかで聴かせて頂いた記憶がありますが、申し訳ありませんが思い出せません。演奏中の立ち姿が印象的で、シルエット・右手・左手の位置や動かし方はとても美しく自然で、ヴァイオリンを弾く人のお手本と言えると思います。演奏をお聴きしてすぐにわかることは、曖昧さの全く無い、とても純度の高い演奏と言うことです。楽譜に大変忠実で、あまり恣意的な解釈をされず、作曲家の意図や作品の「形」を大切にされています。「献身」、あるいは作品に「奉仕」していると言う言い方も可能でしょうか。お聴きしているだけで、弾かれている曲の「輪郭」がくっきりと浮かんで来ます。一聴しただけですと、音楽的に物足りないと感じてしまうところもありますが、聴きこんで行くに連れ、彼女の良さが理解出来ます。下でも書きましたが、音楽的な「遊び」の部分がもう少しあった方が、と言うのが私の感想ですが、それが彼女のスタイルでもあり、そこを突きつめておられるのであれば、それはそれで十分立派だと思います。少し言い換えますと、音の傾向や表情付けがどの曲も似たように感じましたので、更に曲によって異なる「何か」を聴かせて頂けると、もっともっと評価が高まるでしょうし、表現の幅も広がるような気がします。バッハももちろん素晴らしかったですが、ショーソンで聴かせて頂いた細やかな心配りのある演奏は、いつまでも心に残る素晴らしい演奏でした。清水さんに寄り添うように、素敵なピアノを弾かれていたのは、松尾 紗里さん。フランス留学を終えられ、今後は関西を中心にご活躍されることでしょう。おふたりとも、関西での公演もおありになると思いますので、ぜひ聴きに伺いたいですね。
もうおひとり、銀賞「候補」とさせて頂いた11番の方は、藤原晶世さん、現在東京芸術大学大学院に在学中の方です。同じ主催者の「第1回東京芸術センター記念ヴァイオリンコンクール」で金賞(最高位)を受賞されておられる実力者です。東京では大変人気のあるヴァイオリニストと言う噂は耳にしていましたが、私がお聴きするのは初めてで、大変興味深く演奏を聴かせて頂きました。既にご自身のスタイルが確立されており、強い個性が客席まで届いて来ていました。舞台上での雰囲気を大切にされるタイプとお見受けしましたが、曲を少し崩し過ぎている感じがして、個人的にはもう少し曲全体の輪郭がわかる演奏の方が好きですので、その点で「好み」と言うには少し違うヴァイオリニストのような気がしました。音色の「引き出し」が多く、技巧に長け、奏法も多彩ですので、バッハよりはサン=サーンスやパガニーニのような音楽に良い面の特徴が表れ、確かに素晴らしい演奏を聴かせて頂きました。お持ちのユニークな音楽性を武器に、ぜひ日本を飛び出して活躍して行ってもらいたい、そう思わせるヴァイオリニストです。本選でピアノの共演をされた方は、開原由紀乃さん、藤原さんと同じ東京芸大の院生の方でした。この方のピアノも大変素晴らしいですね。とにかく併せが上手ですし、ルバートの趣味の良さを含め、高い音楽性を聴かせて頂きました。
本選の演奏は案外に聴こえましたが、14番の方の演奏も心に残りました。彼女は中村 ゆか里さん、パリでの長い留学を終え、国内の各方面で活躍中のヴァイオリニストで、同じ主催者の「第1回東京芸術センター記念ヴァイオリンコンクール」で銅賞を受賞されておられる実力者です。彼女の特徴は、音色ですね。切ないぐらいに楽器が鳴っています。弓の運び方も実にユニークで、一弓を溜めに溜めて粘る奏法は、流行の弾き方ではないですよね。持ち味のヴィブラートと併せ、十分に個性が表出されていました。力強さと言う点で幾分物足りないかな(それも彼女の個性だと思います)と言う感じもありまして、多くの要素が含まれているチャイコフスキーの協奏曲を本選で選ばれたのは、「賞を獲りに行く」と言う意味からすれば少し作戦を間違えたようにも思いますが、私には当然彼女の本意は良くわかりません。本選ではフランスもののソナタをぜひお聴きしかったですね・・・。彼女の本領は、広い会場よりは、サロンのようなインティメイトな会場でより輝くのではないでしょうか。協奏曲の込み入った譜面を、おひとりで譜めくりなして奮闘されていたピアニストは、佐久間晃子さん、中村さんと息の合った良い共演者のようですね。
2番の方は、中村太地さん。現在ウィーンでご活躍中のヴァイオリニストです。先程、コンサート会場でお見かけしましたので、お声をかけさせて頂きました。クライスラーの素晴らしい演奏の背景を知り、納得しました。11月には豊岡市の方で音楽祭を開かれるとの由。ウィーン室内管弦楽団のメンバーとしての活動、そして音楽祭への参加と多忙な日々のようです。もっともっと知って行きたい、そして応援して行きたいヴァイオリニストですね。音楽祭の最終日はぜひ伺いたいと思います。
6番の方は、瀧内曜子さん。現在は京都大学大学院にて医学の研究を本職とし、お仕事以外の時間で楽器の研鑽を積まれておられる方です。先程、コンサート会場でお見かけしましたので、お声をかけさせて頂きました。アマテュアだから・・・と言う評価をするつもりもありませんが、そのような激務をされている境遇の中、このコンクールに出場しようと言う、そんな素晴らしい意気込みを直接お聞きし、こうやって記事を書きながら、涙があふれて来ています。常にご自分を高めて行こうと言う彼女のお人柄、心からご尊敬申し上げます。音楽面での個人的な感想は、下で書かせて頂いた通りですが、「音符を弾く行為」が演奏として舞台で前面に出てしまっているように思いますので、音楽の「流れ」・・・フレージングをもう少し自然に感じられながら弾かれると、更に良くなるように思います。客席で今回のコンクールをお聴きした、ひとりの聴衆の感想ぐらいに思って頂ければ幸いです。予選・本選を通じ、素晴らしいサポートをされていたピアニストは、関西では著名なピアニストの藤井快哉さんでした。音楽が一段良く聴こえるはずです。おふたりのリサイタルが来月開かれます。ひとりでも多くの方に足を運んで欲しいですね。
予選からのプログラムを見返しますと、2番と6番のおふたりの選曲がとてもヴァラエティに富んでいることに、今頃気が付きました。このコンクールの趣旨に良く沿っていますよね。
惜しくも第2次予選で涙をのんだ10番の方は、山口尚記さん。現在東京芸術大学大学院に在学中の方です。第1次予選で素晴らしい演奏を聴かせて下さったんですが、第2次予選でのブラームスは少し残念な演奏でした。ご本人がその演奏をどう思われているのかは存じ上げませんが、曲によって演奏にムラが出てしまうと言うことは、逆に言えばまだ伸びシロがあるとも言えますよね。良いものをお持ちの方ですから、十分に自己分析をされ、更なる研鑽を積んで行って頂きたいですね。素敵なピアノを弾かれていたのは、お馴染みの鈴木華重子さんでした。本選でもお会い出来ると思っていましたが・・・。
奏者の皆さんには、持参した楽譜に快くサインをして頂きました。ありがとうございました。
結果は、公式サイトにて今夜19時30分以降にアップされるようです。
出場された奏者の皆様、そしてピアニストの方々の、今後益々のご活躍を心より願っております。短い期間ではありましたが、どうもお疲れ様でした。そして、コンクールと言う場面ではありましたが、心に残る素晴らしい演奏の数々、本当にありがとうございました。
8/15
本選を聴きに行って来ました。それにしても、本選でも上位の実力と思われる5番の方が出場出来なかったのが、本当に残念です。さて、会場が「大箱」に替わり、予選でお聴きしていた音色が全く異なって聴こえて来るのには驚きました。
昨日まで「抜けて素晴らしい」と書かせて頂いていた2名の方ですが、まず、14番の方の今日の演奏は、もう一つのように思いました。せっかくの持ち時間・40分の「リサイタル形式」の舞台、演奏される曲目の「レパートリーの広さ」も考慮されると言うように要綱にも書かれていますが、今日弾かれたのが「ピアノ伴奏」での「協奏曲」1曲。プログラムを拝見した時点で、少々がっかりしました。仕方ないのかも知れませんが、ピアノ伴奏のみの部分が大きくカットされ、曲の体裁を成していなかったと言うのも、聴く立場からすると、とても残念でしたね。「チャイコフスキー」の「ヴァイオリン協奏曲」と言う「曲」を聴きに行っているのですから・・・。演奏ですが、今日はミスも目立ち、ここまで精度が落ちてしまうと、ちょっとどうしてしまったのか、と言うように思ってしまいます。音量もやや小さ目だったでしょうか、広い会場の後方まで音が届いて来にくかったように感じました。この濃厚な曲に対するニュアンス面も幾分単調に聴こえ、このスケールの大きい協奏曲をここで取り上げられたのは、ちょっと失敗だったかも知れませんね・・・。共演のピアノの方も、譜めくりに追われてしまい、音楽的な流れが途切れがちになってしまったのも残念でした。2回の予選の貯金がモノを言うかどうか。本選だけの評価で決まるのであれば、入賞はきついかも知れません。
もうひとりの8番の方、この方も全曲がブラームスと言う極端なプログラムでした。14番の方同様、協奏曲では冒頭と中間部のピアノ伴奏のみの部分が大きくカットされていましたが、「救い」は、第1楽章だけの演奏だったと言うことと、ソナタがプログラムに入っていたことです。40分と言う時間も目一杯使っていた感じですので、これはまだ仕方ないと言えるでしょうか。演奏ですが、予選での感想と全く変わらず、スケール感・ニュアンス・曲の様式感の表出、それらの全てで素晴らしかったと思います。無意味に弾く音符の数が極力少ないのは、特にブラームスの演奏では大切なことですね。ただ、込み入った楽想や音符が重なった重量級のプログラムですので、例えば
このような場所での音楽的な音符の意味づけと言う点で、多少物足りなかった感じもありました。ソナタに比べ弾きやすかったのでしょうか、協奏曲は演奏が更に映え、素晴らしい技巧と音楽性がストレートに聴こえて来ました。カデンツァはクライスラー。完璧でしたね。予選からの安定感も併せ、個人的にはこの方が金賞受賞に最も近いように思います。
15番の方は、更に調子を上げて来た印象で、今日は、予選から通じて最も素晴らしい演奏を聴かせて頂きました。彼女のヴァイオリンは、全体的に表情や音そのものが多少硬い感じがありますが、それが彼女の演奏スタイルの一部を形作っている訳でもありまして、それを否定するつもりはありません。背筋を伸ばした理想的な佇まいは、聴衆の聴く姿勢をも正してくれますし、ヴァイオリンの弾く姿勢とすれば理想形で、私も憧れます。清廉・清潔で曖昧さの一切ない真面目な演奏スタイルが、聴く側を惹きつける大きな理由なのでもあるのでしょう。これまでの無伴奏の曲と違い、ショーソンの「詩曲」は大変精緻で魅力的な演奏でした。ピアノの方との息も良く合っていたように思います。音楽的な「遊び(ハンドルの遊びなどと言う意味)」と言うような点で、もうほんの少し「ゆとり」・「余裕」のようなものが出て来ると、もう一段階高いところまで上り詰められる、そんな素晴らしい素材なのではと思います。彼女は銀賞候補の一角に食い込んで来たでしょうか。
11番の方は、常に演奏に余裕があり、曲の形が崩れてしまうことがあり、それが聴く側にはちょっと「手抜き」感を感じさせてしまっている印象があります。最初から最後まで真剣に弾かれたら、世界でも通用するような「とんでもない」ヴァイオリニストなんだと思いますし、東京では今最も人気のある若手ヴァイオリニストのおひとりだそうですので、彼女の潜在的な魅力を見つけられている聴衆・ファンもきっと多いのでしょうね。ただ、今回のコンクールの演奏を通じ、彼女にはまだそのような「欲」が無いようにも感じました。ブラームスのソナタは、曲の様式が崩れてしまった感じの、個人的には残念な演奏でしたが、サン=サーンスの「序奏とロンドカプリツィオーソ」は、特質すべき超名演だったように思います。彼女は、フルートの上野星矢さんのような異端とも言える存在なのでしょうか。日本のコンクールはもう卒業され、世界に羽ばたいて行って欲しい逸材だと思います。彼女も、このコンクールでは銀賞候補の一角とさせて頂きます。
2番の方は、曲によっては様式に見合わない感じの演奏をされる一方で、「嵌る曲」では実に素晴らしい演奏を聴かせて下さいます。2次のクライスラーはその好例ですし、今日もイザイの「~奇想曲」は実に華麗で見事な演奏でした。今日のシューマンのような曲ですと、ちょっと「くどい」・「暑苦しい」感じになってしまい、聴いている方もちょっとしんどいんですよね。もう少し曲の様式感をかっちりと表面に出しながら、ストレートに音符を弾き込むような感じで行かれると、レパートリーも増えて楽しいと思うんですけれど。
6番の方は、今日はかなり健闘されていたように思いますが、音楽的な表出力・表現力と言う点で、他の5名の出場者の方とは差があるように感じました。合わせていたピアニストの方が大変素晴らしく、重要なサポートをされていたように感じました。
個人的な順位付けではありますが、金賞候補は8番の方、銀賞候補は15番・11番の方、2番と14番のおふたりが招聘証、6番の方の評価は良くわかりません。
後程、追加で記事を書かせて頂こうと思っていますが、一旦記事を保存して、アップさせて頂きます。
短い夏休みを使って、今日、第2次予選を聴かせて頂きました。
「最大公約数」と思われる出場者が選ばれる第1次予選とは異なり、予選が進み、残られる人数が絞られて来ますと、審査員や聴衆=私との好みがはっきりと異なっていることを実感します。既に第2次予選通過=本選出場者・6名のエントリーナンバーが発表されていますが、それはひとまず置いておいて、一昨日と今日、私が聴かせて頂いた演奏から、私が「抜けて素晴らしい」と思った方は、演奏順に、8番・14番のおふたりの方です。
8番の方の感想は、一昨日と大きく変わらないんですが、弾かれる曲を完全にご自身の手の内に入れ、そしてそれを咀嚼した後、ご自身の個性的なスタイルで以って、見事に表現し切っておられました。とにかく積極的で、演奏が常に自信に満ち溢れていて、「音楽を聴いている」としみじみと感じさせて下さいます。とりわけ、シマノフスキの作品で聴かせて頂いた、抽象性と標題性を併せ持った難しい素材を、確かな技巧とご自身が身に付けておられる高い芸術性で以って、メッセージを客席まで見事に届けて頂いた演奏は、とりわけ見事でした。奏者に劣らない実力のあるピアニストをパートナーにされていたことも、表現の幅が更に広がった大きな要素だったのかも知れませんね。今日は、正直言ってあまり良いプログラムだとは思いませんでしたので、本選では、しっとりとしたロマン派の音楽を、じっくりお聴き出来たらと思います。
14番の方も、一昨日の感想と大きくかわりませんが、音そのものに輝かしさがある訳でも無く、一聴すると少し窮屈な音楽のようにも聴こえるんですが、それが彼女が持つユニークな「音楽性」「芸術性」=個性であって、それを惜しげもなく披露される姿勢は大変素晴らしいですね。音色は常に渋く、また息長く旋律を唄わせる独特の弓の使い方は、流行の現代の奏法に逆行しているようにも思いますが、それを今やる・出来ると言うのは、コンクールだけでは無く、今後彼女の演奏家人生での大きな「存在理由」になるはずです。クライスラーでの前奏曲の部分、そしてタルティーニは全編にわたって、とりわけ素晴らしいと感じました。ピアニストとの息も完全に合い、素晴らしい共演でしたね。本選では、大きめなソナタ(特にフランスもの)がお聴きできたらうれしいですね。
おふたりに続く順番として、5番の方も大変素晴らしい演奏をお聴き出来たんですが、どういう訳か、ここで落選となってしまいました。彼女の演奏は常識的で正統派と言えます。楽譜にも実に忠実で、そこからご自身の音楽性が十分に聴こえて来ると言うことは、凄いことですよね。一昨日から常に安定していますし、技術的な破綻も全くありません。今日弾かれた2曲も素晴らしい演奏で、ここで落選されたのが不思議・残念で仕方ありません。
一昨日、上位に挙げさせて頂いた10番の方は落選となってしまいましたが、今日のブラームスのソナタは、残念ながらあまり良い演奏とは思いませんでした。弾かれる音楽のスケールが小さく感じ、特に弱音で指定されている場所の演奏が必要以上に神経質になってしまい、音楽全体が貧弱に聴こえてしまったのは残念でした。ブラームスの音楽ではこれは致命的です。ピアニストの方は良く存じ上げている方でしたので、明後日の共演では、と期待もしていたんですが・・・。彼の演奏で気になったところをひとつだけ。例えば、第3楽章の最後、

ヴァイオリンが休符になっているところ、そこはピアノの8分音符が鳴っているんですよね。そこで、毎回息を吸っている音を、ピアニストにも客席にも聞かれてはまずいでしょう。ヴァイオリンを弾く側とすれば、ここは心の中で休符を噛みしめるべき部分だと思います。それが、大きい意味での「音楽から行間が感じとれる」と言う感想にも繋がるんだと思うんですよね・・・。
もうおひとり、11番の方は本選に進まれました。ただ、お聴きした2日間の演奏からは、あまり音楽的な密度が感じられず、中身に乏しいような印象もあるんですよね。失礼な言い方になりますが、これまでご自身が蓄えて来たものをとりあえず出してみたら、他の方よりは上手かった、そんな気がしないでもありません。このコンクールに関しては、音楽に対する真摯な姿勢もちょっと感じられ難いようにも思います。それでも、もちろん素晴らしい演奏には違いないんですけどね。
一昨日の演奏では、上位5人にお入れしていなかった15番の方ですが、今日のバッハはなかなかまとまった素敵な演奏でした。音楽そのものの輪郭がはっきりしており、この曲から何がしたいのかが明確でした。色んな意味で「調子が上がって来た」と言う感じもしました。彼女の演奏で気になったところですが、例えば「シャコンヌ」でアルペジオを弾くあたり、全体的には推進力があり、音楽は流れて行くんですが、最低音(G線・D線で弾かれる音)の旋律線がはっきり弾かれないため、通奏低音の音列がつながって聴こえて来ないんですよね。そのため、この曲のスケール大きな音楽の世界が、今一つ表現し切れていかない、そんなもどかしさを感じました。
本選に進まれた2番の方、独奏で弾かれたクライスラーは大変素晴らしい演奏でしたね。その裏返しとなりますが、彼の弱点は古典の曲を弾く時のスタイルとヴィブラートでしょうか。ロマン派と同じ弾き方をされるように思いますので、音楽の形が崩れてしまいがちですし、音そのものやヴィブラートの「引き出し」が少なく、音楽が単調に聴こえてしまうんでしょうか。ピアノの方とのアンサンブルももうひとつのよう感じます。
同じく本選に進まれた6番の方ですが、私はあまり好きな演奏ではありません。体を動かし過ぎますし、音色が常に同じで、部分部分での変化が感じられず、音楽から深みを感じにくいんです。技巧的にも特に優れているようには思いませんし、本選ではもっと他の方の演奏をお聴きしたかったですかね。
4番の方は、確かに上手な方ですが、演奏から音楽に対する「献身」の心が感じられ難かったでしょうか。
7番の方は、音楽への「踏込」が浅いように感じ、特にブラームスでは少し表面的に過ぎたように思いました。
あくまでも個人的な予想ですが、今のところ、8番・14番のおふたりが金賞候補、それを追うのが11番・15番のおふたり、そして2番の方、その後に6番の方と言う感じでしょうか。明後日の本選が、楽しみです。
ピアノに比べ、ヴァイオリンの方に親しみがあり、今日は楽しみに聴きに伺いました。
今日のポイントは、次も聴きたい・金を払っても聴かせて頂きたい魅力的な演奏なのかと言うことと、音符がきちっと弾けている前提として、その人固有の「音楽性」「個性」が聴き取れるかどうか、の2点でした。
私が最も素晴らしい奏者だと思ったのは、8番の方です。また、8番の方と同じくらい素晴らしい音楽性を感じたのは、5番・10番・11番・14番の4人の方でした。この5人の方の順番は、聴く人の好みでいくらでも変わって来ると思います。1番・2番・4番・7番・15番の5人の方も、それぞれがお持ちの良いところがあり、素晴らしい奏者だと思います。
上位に挙げさせて頂いた5人の方の感想に共通しているのは、「将来性を感じる個性が聴かれた」ことでしょうか。8番の方は、決してスマートとは言い難いスタイルですが、とても重厚で、一言で言うととても「渋い」ですね。しかし音楽は決してもたれないんです。音符のひとつひとつを大切にされ、それでいて音楽の流れが途切れません。一聴すると、華やかさに欠ける感じから、今どきのステージでは「流行らない」かも知れませんが、書かれた音符から零れ落ちる「もの」が、最も多く聴かれました。5番の方は、音そのものの魅力には欠け気味ですが、それを補って余りある「音楽性の表出」が大変魅力です。真摯に音符に取り組んだ成果が、深い意味付けを伴った「構築物」として見事に表れました。特に「ツィガーヌ」は技巧の破綻も無く、なかなかお目にかかれない高いレヴェルの演奏でした。10番の方は、言い方が悪いですが、今どきの「中庸」を行く感じではありますが、弾かれる音楽は常に丁寧で思慮深く、彼の人間性を反映しているかのような素晴らしいものでした。その一方で、現代的な鋭角さ・切れ味をも持ち合わせています。それぞれの音の処理も見事で、一般的に言うロマン派の音楽を、次回聴きたいと思わせる、そんな楽しみを感じました。11番の方の演奏は、10番の方の演奏を更に「スタイリッシュ」にした、現代的で洗練された演奏だと感じました。表現は至ってシンプルなんですが、弾かれる曲の見通しがとても良く、それでいて情感は思った程不足しない、そんな何とも不思議な演奏で、それが彼女の際立った個性・スタイルなんだと言うように思います。14番の方は、既にご自身の演奏スタイルを確立されておられますね。技巧は見事・確かなんですが、それが決して「これ見よがし」とはなっていません。弾かれる音楽は密度が濃く、「内容」がびっしりと詰まっていています。音そのものは幾分華やかさに欠ける印象もありますが、安定していますし、演奏をお聴きした時の「充足感」は、並みではありません。個性の「押し出し」と言う点では、4番の方も実力的には決し引けを取らないんですが、多少「パフォーマンス臭」が感じられたことと、ステージマナーの点で気になったことが、個人的に上位5人の下にさせて頂いた理由ですが、彼女も上位入賞候補であることは間違いないですね。金賞(or最高位)は、この6人の中から選ばれるであろうと思います。2番の方は、ほんの少しですが音の扱いにぞんざいになっているような場面が気になってしまいました。「全ての音」に神経を集中出来ていない・していない、言い換えるとそんな感じでしょうか。7番の方は、パガニーニで聴かれた音価に満たない奏法が気になったのと、折角手配されたピアノの方との「連携」があまりうまくいっておらず、演奏からストレスを感じてしまったのが、個人的な減点材料です。次は技巧的でないしっとりとした曲をお聴きしてみたいですね。15番の方は、真面目な姿勢で音楽に取り組んでおられることが良くわかり、演奏にもそれが十分に反映されていた反面、行間から音楽的な「ゆとり」のようなものが感じられにくく、ほんの少し息が詰まるような場面が感じられたのが、個人的には残念でした。1番の方は、残念ながら第2次予選には進めなかったようですが、清廉な音楽作りには共感が出来、個性が更に発揮出来る機会として、もっと違う曲を第2次予選でお聴きしてみたいと思っていましたので、残念な結果でした。3番の方は、全体的に平板で、弾かれる音符から、生き生きとした「音楽」が聴こえて来にくかったでしょうか。6番の方は次の予選に進めたようですが、弾かれた音楽から「インスピレーション」が感じられ難く、長いフレーズを感じたい部分でも音楽の流れが途切れてしまっているように聴こえてしまい、個人的にはあまり楽しめませんでした。16番の方は、更なる研鑽を積んで行って頂きたいと思いました。
明後日の第2次予選は、ひとり25分と言う持ち時間になり、第1次予選で弾かれた曲は再演出来ないルールとなっています。さて、どんな素晴らしい演奏が披露されるでしょうか。
一聴衆として、このような素晴らしい機会を作って頂いた主催者に、心から感謝申し上げます。

