2013/4/9 第8回神戸フルートコンクール本選 曲順と曲目を考える 1 | 音楽と競馬、思ったことを書いて行きます

人の耳と脳と言うものはいい加減なもので、このブログで評論家みたくああだこうだと偉そうに書いていても、それは時に主観的であり、あてにならないものだと今実感しています。第1位になられたおひとり、セバスチャン・ジャコーさんのC.P.E.バッハの協奏曲を本選と披露演奏会で聴いた感想を書いたんですが、当日手元の時計で押したラップタイムを見直しましたが、私の全くの見当違いだったことがわかりました。これについて少し書いてみたいと思います。

まず、本選の時の感想を転記しますと「テンポを比較的遅めに設定して音楽に「遊び」の部分を作り、それにより表現力の表出を十分に行うと言う「憎い」演出をしてくれ、余裕さえ感じました。」 このように書きました。一方で、披露演奏会の時の感想を転記しますと、昨日とは一転、スピードアップさせた「攻め」の第3楽章で、ご自分の極限を披露して下さいました。」 このように書きました。しかし、ラップタイムで検証すると、時計的には全く逆だったんです。以下、本選で演奏されたC.P.E.バッハの各奏者・各楽章の手元で計測したラップタイムです。


1.ティメア・アチャイさん    8分03秒 8分25秒 6分26秒

2.竹山 愛さん          7分25秒 9分14秒 6分25秒

3.セバスチャン・ジャコーさん 8分02秒 9分14秒 6分23秒

          披露演奏会        9分24秒 6分25秒

4.濱﨑 麻里子さん       7分53秒 9分20秒 6分40秒

5.マチルド・カルデリーニさん 違う曲

6.アドリアナ・.フェレイラさん  7分25秒 7分45秒 6分19秒


第1楽章は、明らかに3つの速度パターンに分かれますね。竹山愛さん、演奏直前の舞台上で、指揮者に「早目に」と直接指示する珍しい場面を目にされた方も多いと思います。前奏者のアチャイさんの第1楽章のテンポが、舞台裏で聴きながら「遅い」と思われたんでしょうね。引き締まったテンポで「勝負」に出たんじゃないかと思います。それがその楽章で技巧的に破綻してしまい、アチャイさんに比べ弛緩した印象になってしまった第2楽章、そして立ち直ることが出来なかった第3楽章に繋がって行ったのだと思います。竹山さんが最初の奏者だったら、彼女自身も自分のやりたいように出来たんじゃないでしょうか。ちょっと他を意識しすぎてしまった・・・。ご自分のイメージ通りのテンポで演奏していたら・・・と思うとちょっと残念ですよね。ここで竹山さんにとって順番の明暗が出てしまった感じがします。そして、第1位になられたセバスチャン・ジャコーさんに続いて行きます。第1楽章が前の奏者がかなり早いテンポでしたので、私の中で余計にゆったりだと感じたんですよね。第3楽章も中庸なテンポなんですが、指回りにも余裕があり、これで竹山さんとの差が決定的になってしまったと言う感じでしょうか。濱﨑麻里子さんの演奏は特に印象に残らなかったんですが、第2.3楽章でのテンポの遅さが余計にそういう印象を後押ししてしまった感があります。このテンポでは技巧面でも優位に立てませんし、演奏も重たく(鈍く)感じてしまうことになったんでしょうか・・・。次のマチルド・カルデリーニさん、この順番で皆さんと同じ曲を演奏されなかったのは、ある意味幸運だったかも知れません。審査員も聴衆も少し耳が曲に飽きて来たところに、出だしが長調の明るい曲で雰囲気を一掃し、第3楽章の超絶技巧も見事乗り切ったんですよね。順番がもっと前の方だったら印象が大きく変わったかも知れません。実際に、私の耳にもとても新鮮な演奏に感じましたし。そして最後のアドリアナ・.フェレイラさん。全ての楽章で最速のラップタイムを計測しています。特に第2.3楽章は圧倒的に早いラップタイムでした。全てにおいて積極的な演奏で、確かに素晴らしかったんですが、ここまで続けて聴いて来ると、この演奏は「かなり忙しない」と思ってしまうのかもしれませんね。この方も、もっと前の順番だったら大きく印象が変わっていたかも知れません。あまり演奏順について考えたことが無かったんですが、こうやって順番にラップタイムを比較したりすると、何となくですが、これが評価の一部に繋がって来る重要なことなんだなあと思ってしまいますよね。

それと、最初に書いたセバスチャン・ジャコーさんの本選と披露演奏会の印象。実際には披露演奏会の方が2つの楽章とも遅いタイム、上で書いた感想とは全く逆だったんですね。これはちょっと恥ずかしことなんですが、それだけ本選の時のセバスチャン・ジャコーさんの演奏は、余裕綽綽で余程の自信を持って臨んだんだと言えるのではないでしょうか。実際にケチの付けようのない協奏曲だったんですから。恐るべしセバスチャン・ジャコーさん、ですかね。


せっかく行われた国際コンクールです。こういう聴き方も面白んじゃないかなあと。まあほぼ自己満足ですけどね・・・。曲もほぼ憶えました。結構良い曲だったんですね。今後、この曲のいろいろな演奏も聴いてみたいですね。

次回、いつになるかわかりませんが、本選の前半に演奏されたモーツァルトのフルート四重奏曲についても、考察出来たらと思っています。