だいぶと話、特に本筋が置き去りになってしまったが、阿蘇グループ幹部である金谷と河本は大原に近付いていった。
本来であれば私の客であるし、私を跳ばして接触するべきではないのであるが、この二人はどうしようもなくがめつく下品な凌ぎをする。
よほど大原が美味しい人物であると踏んだんだろう、大原が現金を用意できていない状態なのに2億円分の残株を先渡ししたようだった。
私の客であることを盛川は知っているが、仕上げたのは自分たちだとアピールするつもりであったのだろう。
私はそれに対して奴等に文句のひとつも言わなかった。
それは大原がそんなに美味しい人物ではないと思い始めていたことに付け加えて、大原のようなアホボンを相手にするのに疲れていたためでもある。
結果、大原は2億のカネを作ることがなかなかできず、金谷と河本にかなり詰められていたようであった。
そして事もあろうに大原は先に納品されている株を売り捌いていたらしく、それを知った金谷と河本は激怒し大原を追い込んだ。
大原は百合絵に対して自分は独身だと言っていたため私もそれを信じていたわけであるが、実は嫁も子供もいたらしい。
なぜそれが発覚したかというと、金谷と河本が逃げ回っている大原の自宅を襲撃したところ、嫁が大原を隠していたのだが二人は強引に上がり込み隠れていた大原を嫁と子供の前で無理やり連れ去り軟禁したからである。
金谷と河本は現在の神戸Y口組の母体となるYK組とベッタリであったため、やることも手荒で強烈であった。
それでも大原は警察沙汰にはしなかった、いや、前納された未払いの株券を売り捌いてしまっているため自らも罪に問われるから出来なかったのだ。
大原は二人に謝罪し、なんとしてでも残額は払いますと約束して解放された。
私は金谷と河本に呼び出され
「おい、大原の責任どうするつもりや!!」
と詰められた。
私はやはりそう来たかと思い
「は?
そんなんこっちにケツ持ってくるんはおかしいでしょ!?
あんたらが勝手に俺に内緒で先走りしたわけやし、俺にケジメとれ言われても困りますで」
と言い返した。
二人は少し怯んだが
「あんなぁ、大原から聞いたけど、おまえ大原から謝礼とるために一筆書かせとるらしいな、これ盛川会長が知ったらどう思うやろなぁ」
『大原のダボがチクりやがって…』
確かにそれを盛川に知られるのはマズイ。
こちらが何かを言い返す前に金谷が
「あんな、ここだけの話やで、会長しばらく中国から帰ってこおへんし、帰って来ても株券を管理してるんは俺やから互いに会長には黙っとくことにしようやないか」
こんな提案をして来た。
実にふとどきな提案だ。
しかしそれは幹部二人が私に完全に心を許したといえる確認でもあった。