i署に到着すると、大塚の取調室と私と李の取調室は分けられた。
まあこれは当然の処置であろう。
私は既に警察へ大塚が借用書を盗んで逃亡したことについての被害届は出していると説明したので、i署もそれを管轄警察署へ確認した。
そして場は管轄警察署へ移されることになり、私は李の車で大塚はパトカーにより移動した。
そこへ到着してもまた別室で取り調べが行われ、そこから一時間ほどして警察が
「あちらの弁護士とも連絡をとりまして、この事件については民事事件だと主張しているのでこのまま釈放します」
と言った。
私はそれに対して、借用書を盗み出しているんだから当然窃盗だし刑事事件だろうと主張したのだが、警察も申し訳なさそうに
「お気持ちは分かりますが、とにかく今日のところは留置せずに釈放します」
と言う。
いつ釈放するのかと聞くと、既に母親が迎えに来ていて1階の待合室にいるだろうと言ったので私は取調室を飛び出した。
もちろん李も付いて来て、刑事は慌てて追いかけてくる。
1階へ行くと大塚と一緒に大塚の母親らしき女性が座っていた。
私はそこへツカツカと近寄り
「おい大塚、はよカネ返さんかい」
と言った。
二人の側に付き添っていた刑事が私を制止しようとするが、それを振り切ってさらに捲し立てた。
すると大塚から耳打ちされた母親が急にベンチから立ち上がり
「あなたがGさんね、この人殺し!」
と言ったので
「はあ? 誰が人殺しやねん!
慰謝料をずっと払ってくれへんかった旦那が死んで喜んでるくせに、逆に礼を言わなあかんのちゃうんかオバハン!!」
と罵倒してやると逆上し「人殺し」と連呼してきた。
それに便乗して大塚も「人殺しー!」と言ってくる。
私も李も大塚のその態度と発言にブチキレて
「なんやとコラ!!
泥棒の分際で、なに偉そうな口利いとんねん!」
と、警察署の受付で罵り合いになり、周囲の目がこちらに集まった。
それを見て警察官らが仲裁に入って収めようとするので
「この人殺しって言葉もれっきとした名誉毀損罪でしょ!
早くこいつら逮捕してくださいや!」
と訴えたのだが、引き離されてしまった。
そしてこれを最期に母親は勿論、大塚とも会っても話してもない。
大塚の破産は認められ、免責も認められ、私は大塚に貸した金銭4500万円を全て踏み倒されたのである。