月曜日に病院に運ばれたマスターは、変わらず意識不明だという。
心臓と肺を機械で動かしている状態だということで、奥さまは生きた心地がしないだろう。
そんな中。
妻が、
『マスターのために西新井大師に行きましょう』
と言ってくれた。
如月はそういうことにとんと疎いのだけど、妻によると西新井大師は関東三大厄除け大師のひとつで、病気平癒の有名なパワースポットなのだそうだ。
正直すがれるものならなんでもすがりたい気分であるので、妻の言葉に甘えて、家族で西新井大師に行くことにした。
妻の言う通りに、マスターの名前を書いて護摩焚きをしてもらい、『当病平癒』を願う。
護摩焚きがなんなのか、調べてもわかるようなわからないような、そんな程度の如月である。
こういうことはおそらく、独り者だったら一生縁がないことだった気がする。
妻はこういうことを大切にしてきたんだなあと思った。
西新井大師は如月の家からだとなかなかに不便な場所にあるのだが、これで治ってくれるなら安いものである。
子供を連れて遠出すると何をするにも不便で、帰宅してぐったりしていたところ。
今さっき奥さまから連絡があり。
「マスターの心臓が動き出しました」
と!
まだ意識不明ではあるものの、機械ではなく自分で心臓を動かしているということで、希望が出てきた。
マスター、頑張っている!
このまま早く、意識不明から回復してほしい。
子供が生まれたもののずっとコロナ禍で、マスターご夫妻に子供たちの顔も見せられていない。
マスターは来年還暦で、まだあちらの世界に行くには早すぎる。
奥さまも待っている。
意識、早く戻ってほしい。
きっと、大丈夫。
妻に、とてもありがたいと思った一日だった。