猫のことが気になって、大して寝ていないのに目が覚めてしまう。

朝5時。外は雨が降っていた。


気になって仕方がないので、雨の中、車を運転して漁港へ向かった。

昨日見た限り、白黒はわりと健康そうだった。

やはり、風邪をひいている仔猫が気になる。

雨が降っていたので、到着してみると、雨宿りができる場所に2匹ともいた。

行きのコンビニで買っておいたかつおスティックをあげる。

白黒はよく食べた。

しかし、仔猫の動きが、昨日よりも間違いなく悪くなっている。

体温が下がっている。

放っておいたら本当に死んでしまうかもしれないということが、経験上わかる。



でも、今動けば助かるかもしれない。


如月の悪いところがまた出てしまった。

あまりにも仔猫で、今日すぐは飛行機には乗せられない。

沖縄で、適切な治療を受けさせてもらえるところにまずは預かってもらい、その間になんとか里親さんを探すしかない。

白黒は白黒で、心配になるぐらいに如月になついてくれたので、悪い人間に対して警戒心が働かないかもしれない。


…保護しよう。



あとのことはそれから考える。

とりあえずTシャツを1枚、小屋の軒下に敷いておいて、仔猫をそこに置く。

うまいことそこに寝てくれた。


「あとで迎えに来るから、それまで待っていろよ。」

2匹に言い残して、まずはホテルに帰る。



実は昨日から、いろいろ動いてはいたのである。


沖縄のNPO団体、『動物たちを守る会 ケルビム』さんと話をしていた。

担当の方と話をしている中で、信用できる団体さんのような気がした。

いい意味でこちらを疑ってくれていた。

それぐらいでないといけない。

命がかかっているのだから。

月額の預り金と、治療費をこちらがもつということで、まずは2匹を預かってくださるという話になり、とりあえず2匹の面倒を見てくださる方がまずは見つかった。

こういう、利益度外視で動いてくださる方々がいらっしゃることは本当にありがたく思う。

ホテルに戻って朝食を食べながら、今日やるべきことを整理する。

ホテル内に朝市が出ていて、そこで少し買い物をしたあと、段ボール箱をひとついただいた。

お店の方は、完全にホテルから荷物を何か送るのだろうと思っていた。

当たり前である。沖縄まで来て猫を保護するなんて誰が考えるだろうか。


バタバタと準備を済ませ、段ボール箱にとりあえず如月のTシャツを敷き、チェックアウトを済ませてまた漁港に戻る。

幸いなことに、雨は止んでいた。


とりあえずお腹いっぱいにさせて安心させてあげようと思い、今度は缶詰め的なものをあげる。




仔猫も、雨が止んで少し気温が上がったので少し動けるようになり、ゴハンを食べてくれた。


すぐ捕まえられるように、猫のわりと近くに車を移動させる。



「今から、君たち2匹をつかまえます。つかまえるといっても、悪いことではありません。一生君たちが幸せに過ごせるように、面倒をみてくれる人をオレが探すからね」



とりあえず2匹の前で宣言だけはしてみた。


仔猫を、車の後部座席に置いた段ボール箱に入れた。


箱の上から重石を乗せて、出られないようにする。


問題は白黒の方かなと思ったら。



もうわかっているのか、車の前でスタンバイしててくれる(笑)



試しに、助手席のドアを開けて、如月は運転席に座り、


「出発するよ。おいで。」


と言ってみたところ。











乗って来た(笑)

心配になるぐらいに警戒心がない(´д`|||)



ただこの状態で運転するわけにもいかないので、白黒もとりあえず段ボールに入ってもらい、一路ケルビムさんからご指定いただいたケルビム動物病院を目指す。


「出せ出せー」



と段ボールはしばらくガリガリいっていたが、やがて静かになった。

運転しながら、捨て猫を保護するのはこれで何匹目なんだろうと考えていた。


如月が大学受験をしくじった夏に拾ったチャコ。

沖縄から持ってきたゴロウ。

千葉から拾ってきたハチ。

茨城で運命的に出会ったココ丸。

昨年青森に助けに行った3匹。

で今回2匹。

あー、もうすぐ10匹なんだなあとか、そんなことを考えていた。

物好きなマジシャンである。



到着してみると、『ケルビム動物病院』と、保護猫シェルターが併設されていた。

必要な書類を書いていると、気になる項目が。

とりあえず、この場で仮でもなんでも名前を決めなければならないらしい。



まあ、確かにそうか。

名前がないとあちらも困る。

時間がないのでさっさと決めなくてはいけない。



白黒の方は、なんだか堂々としていて王様のような風格を漂わせていたので、とりあえず『キング』にした。

そうなるとトランプ的な意味で、仔猫の方は『くいん』である。

如月のイメージでは『クイーン(↗)』のアクセントではなく、『くいん(↘)』である。伝わるだろうか。



あちらのケージに移して、あらためて猫を観察してみる。




キングは本当に堂々としている。

このあと、普通にケージ内でうとうとしていた(笑)



やはり問題は、くいんである。




風邪のせいでとにかく目が悪い。


まずはこれを治していただかないといけない。

どこまで治るのだろうか。


最悪、片目だけ見えないのとかあり得る話なのかもしれないが、例え全盲であったとしても、家で終生過ごすのなら問題はない。

やつらの感覚はこちらとは桁違いなのだから。


でも、ココ丸も、拾ったときは栄養失調で目が開いていなかった。

全盲も覚悟したが、今ではぱっちりお目目である。

だから、くいんも大丈夫と信じたい。


預けるだけ預けて逃げるとか無責任な人間が多いのだろう、やはり、免許証とかの身分証明はなかなかにきちんとやっておられた。

こういう状況なので、こちらのことは信用してもらえた方がいいと思い、芸名から何から全部お教えして、検索で如月琉はすぐに引っ掛かるから行方不明とかそういうことはないので安心してくれときちんとお伝えした。


くれぐれもよろしくお願い致しますと申し上げて、動物病院を後にした。

なんとか、あの2匹の里親さんを見つけなければならないという決意を新たにした。


猫のことを全部終えて、車を返したら、もう那覇空港に向かわなければの時間になってしまった。


結局、沖縄らしいことは全くできなかったわけだが、少なくとも2つの命をなんとか繋げられそうでひと安心である。


羽田からタクシーに乗り、大急ぎで家に帰ると、3人の熱烈な歓迎が待っていた。




ココ丸と4日ぶりの乾杯。





ホテルで買った茎つきの海ぶどうと、沖縄のファミマに売っていたゴーヤチャンプルー弁当が晩ゴハンでした。

ちなみにこのゴーヤチャンプルー弁当が妙に美味しく、如月のお気に入りとなってしまいましたとさ。

ということで、いろんなことがあった今回の沖縄も、これで終わりです。

猫2匹という、大きな宿題が残ったまんまですが(T_T)