「印籠を渡す」
と言っている人がいた。
確か、その人は前にも同じことを言っていたような気がしたが、そのときは「聞き違いだろう」と思って流したような。
でも、やっぱりまた「印籠を渡す」と言っていた。
正解はもちろん「引導を渡す」なわけだが、なぜ「印籠を渡す」だと勘違いしたのだろう。
…やはり、『水戸黄門』のせいではないかと思った。
ドラマの一番盛り上がるところ、助さんと格さんが悪者をある程度痛めつけたところで、満を持して格さんが懐から取り出す、印籠。
あのシーンは確かに「印籠を渡す」っぽいような気がする。
あれで悪者たちは一気に意気消沈し、かなり「印籠を渡された」感はある。
しかし、渡しちゃまずいよな、やっぱし。あんな大事なものを。
諸国を漫遊しているわけだから、次にまた悪者がいたときに黄門さまから出すように促されて、「すみません、こないだ印籠は渡してしまいました」となってしまっては、格さんというよりもうっかり八兵衛になってしまう。
…ところで、「引導」とはなんなのだろう。
調べてみたところ、お坊さんが死者に対し、この世とあの世を結ぶ橋渡しをしてあげることらしい。
だから、「導く」とか「引く」とか
「渡す」が入っているわけだ。
以前の記事で、「場末の店」を、何回聞いても「罵声の店」と言っている人がいた、と書いた。
罵声が飛び交うような程度の低い店、と思っているんだと思う。
印籠を渡すと言っているのを聞いたときに、このことを思い出した。
そして、この手の勘違いを見るたびに、自分もこういう間違いをしてんじゃないかなあと心配になる。
ただ昔、小学校の漢字テストで、
「ヒョウジョウは冷たい」
という問題で、自信を持って
『表情』
と書いたらバツを食らい、正解は
『氷上』
だったことは、大人になった今でも納得がいかない(笑)
ココ丸は、寝たふりをしながら、こちらの「表情」を伺っている。
早くベッドで寝るぞと言ってるんだな。
先に寝ればいいのに、こちらがベッドに行くまで律儀にソファーで待っている。
人間は本当に、猫に学ぶことが多い。