11月19日 木曜日 快晴
温かになった遅い午前、階下で寝ている112歳の老犬、スパイクの
世話で、1日が始まる。
下の世話と朝ごはん。下側になっていた身体を反転させて、マッサージを
する。人と同じで、血液の循環が悪くなっている右半身にマッサージを
施すと、気持ちいいのか、後ろ足をぐーんと伸ばしながら、頭をもたげる。
スパイクの飲む水桶の水が、飲むたびに池の水面のように揺れて、陽の光
と共に煌めきながらダンスする。
今日の今のうちに台所に立って、作り置きの惣菜を準備する。
そうでないと、また、昨日のような日がやってきて、生きている意味
を捜せず、途方に暮れる自分を見つめる事に没頭しかねないからだ。
命が無くなる可能性があると言われて受けた手術の日から、丁度
9ヶ月が過ぎた。
毎日毎日、頭の中ではその日の出来事を具に日記にしているのに
なかなか筆を起こせないままに時間が過ぎてしまった。
痛みが襲ってくると、6人の医師たちに救って貰った命のことや
感謝の気持ちが遠のいて、家事すらまともに出来ない事があると
自分は役立たずと思うようになり、果ては何の楽しみも見いだせ
なくなり生きている事が辛くなる。
そして、誰の迷惑にならないうちに、生前整理をしておきたいと
いう焦りで一杯になる。
そして
今日のように温かで、薬がよく効いている日には、スパイクの世話
を出来る自分に価値を見出し、猫たちの柔らかな毛感触りに生きて
いる感覚を取り戻していく。
今は、その繰り返しで日々を繋いで生きて行っています。
あわ