日展富山展・岡田繁憲「並樹」
森への遥かな憧憬
<北日本新聞朝刊(H21.5.6) 著者執筆>
まず、天空と渾然一体となった大樹の森に圧倒
される。その深い色合いと大胆な構図は、安らぎ
とも不安ともつかぬ風景との邂逅に導く。
森の重厚かつ繊細なグラデーションと、大地の
鮮やかな藍。既成のイメージを凌駕する深遠さと
リアリティーの強度を感じさせる。
これまでも墨絵のような緑の空間を描き、命
の尊さや厳しさを 絵筆に込めてきた。自然へ
の透徹した叙情は、現在の混沌とした世界のあ
りようとも共振し、私たちの内的時間を覚醒さ
せる。
画題のとおり、一つの意志のように肩を寄せ合
う樹木たち。家族や共同体の象徴のようでもある
が、見る者が何を感じるかで豊かな物語が視覚化
されていく。
樹間から漏れる光は、さながら未来の希望を
幻視しているかのようだ。自然と人間との関わり
を問う切なるメッセージが聴こえてくる。
森への遥かな憧憬と厳しい自己凝視によって
聖なるものが見事に形象化されている。
