詩友で俳人の高橋修宏氏の第二句集『蜜楼』(草子舎刊)所収の(333句)
から、22句を紹介します。
麦踏むやメフィストテレス背後より
陽炎の高さに少女歌劇団
菜の花をはみ出してゆく老女かな
羽抜鶏跳べばあらわになるアジア
蜜となるはじめは線香花火より
八月や指紋をひとつずつ消して
月光の及びし砂漠写真集
鳳仙花アジアの地図となりゆけり
人類の昏れてしまえばつくつくし
日本を蟻が曳きずる日の盛り
死をひとつ人は所有し烏瓜
宙を浮く地球も冥き林檎かな
蜃気楼はじめは白き猫を産み
十三夜びしょ濡れのまま星条旗
戦場を持ち上げている霜柱
人はまだ人のかたちのまま残花
戦前の影へ飛び込む金魚かな
美少女の影のこりたる蛇の穴
消しゴムで消えし月下の核家族
千年紀氷河を渡る蝶の影
国境のひとつは春の蒲団部屋
降る雪を聖餐として戦後かな