忘れられて良かった
私の母はアルツハイマー型認知症です。
一人暮らしが難しくなった母を引き取り、夫や子どもたちと一緒に暮らしています。
先日、母がデイサービスに行っているときに失禁をして、
車椅子用の座布団を濡らしてしまったそうです。
代わりにデイサービスの座布団をお借りして帰ってきました。
お迎えの際に、その旨を担当の方から説明を受け(母もその場にいた)、
丁重にお礼とお詫びを伝えて、お別れしました。
母はその件については何も語らず、
いつも通りベッドに横になって休憩していましたが、
その夜はなんとなく元気がないような気がしました。
心配なのは、「恥ずかしいからもうデイサービスに行かない」と言われること。
次のデイサービスの日まで、ドキドキしながら様子をみていました。
しかし、次のデイサービスの日、母はいつものように鏡をみながら、
白髪チェックに余念がありません。
ちゃんと準備をして、デイサービスに行く体勢です。
ホッとしながら、でも思い出させてはいけないと、
デイサービスにお返しする座布団を、外から見えない紙袋に入れました。
母に見えないところで、そっと座布団をお返しして。
いつも通りに、母はデイサービスに出かけていきました。
短期記憶が維持できない母。
失敗したことを、忘れられて良かった。
もしかしたら、ちょっとは覚えているのかもしれないけど、
意識できなくて良かった。
覚えていたら恥ずかしいことを忘れられるのは、ある意味幸運です。