上下2巻のこの本は難しい。
何とか読んでみたものの、中世の北イタリアにあるベネディクト派修道院を舞台にしたミステリーと言ってしまっても、少しも間違いではないのだろうが、何も分かっていないことにもなるのだろう。
深い霧に閉ざされた、冷たい石の修道院の暗いけれど、熱い信仰と信念の闘いはひたすら難解、正統か異端か虚しく叡智が空転する世界。
中世ヨーロッパ、キリスト教の知識が乏しい者にはそれだけでも大変な障壁だ。僕には秘密の図書室の中の描写が迷宮なのだから仕方ないのかもしれないが、どうもパースペクティブとして空間認識できなかった。
キリストは笑わなかったかどうかがそれほどなのかも、理解しがたい。
見習い修道士アドソの見る幻影も、長々と、エーコの膨大な知識の披露につき合わされたようで辛かった。
苦行を強いられる本ではあるが、なぜか最後まで引っ張っていってくれる魅力が有ります。
我々日本人が神道と仏教を信仰しキリスト教を選ばなかったのは本当に良かったと思える程、一神教の正統異端と異端同士のセクト間闘争は、神学論争で終わらず、虐殺、火刑に突き進んでいってしまうような怖さがある。
日本人には確たる芯が無いというのも悪くはないようだ。
