あくまでも個人的な考えであり、一例として参考にしてくだされば幸甚です。
尚、新技術開発センターの書籍:「令和7年度技術士第二次試験「化学部門」の中に、全問題の解答事例と解答のポイントが収録されているので、参考にされることをお勧めします。
<問題>
令和7年度技術士第二次試験問題 化学部門
化学部門【必須科目】
I 次の2問題(I-1, 1-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し、 答案用紙3枚を用いてまとめよ。)
I-1 地球温暖化に関しては、2021年のIPCC (気候変動に関する政府間パネル) 第6 次評価報告書において、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑 う余地がない」と明記され、我が国を含む世界120以上の国と地域が、温暖化影響を工業 化以前に比べ1.5℃に抑えるため、我が国では第7次エネルギー基本計画により2050年 にカーボンニュートラルを実現させる目標を掲げている。このカーボンニュートラル実現 のための具体的な方策の1つとして、二酸化炭素を集めて地中に貯留するCCS (Carbon dioxide Capture and Storage) の活用が挙げられており、2024年5月には「CCS事 業法(二酸化炭素の貯留事業に関する法律)」が成立しその事業化に向けた動きが進めら れている。
このような状況を踏まえ、化学技術者としての視点から、以下の問いに答えよ。
(1) CCSによる二酸化炭素排出量削減を実現させるために、多面的な観点から3つの技 術課題を抽出し、その技術課題の内容を説明せよ。
(2)前間(1)で抽出した課題のうち化学技術が最も貢献できると考える技術課題を1つ 挙げ、その理由と課題に対する複数の解決策を、化学部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行しても残るリスクあるいは新たに生じるリスクを示 し、それへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前間(1)~(3) を業務として遂行する際に、技術者としての倫理、社会の持続可 能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
<解答の考え方>
本問は「CCS」を主題としており、設問中には、①地球温暖化、②カーボンニュートラル(CN)、③CN実現のためのCCSの重要性、④CCS事業化に向けた動きなど様々な視点からの現状や問題点が述べられている。これらを考慮しつつ幅広い視野での解答を心掛けたい。尚、設問には、「化学技術者としての視点から回答せよ」とある。できる限り「化学産業の課題と貢献」に関係があり、かつ、専門知識に基づいた解答をすることが好ましい。
設問(1)には、「技術課題」とある。広範囲な課題ではなく、化学技術に関する技術課題を挙げることをお勧めする。また、「多面的な観点から技術課題を抽出し、その技術課題の内容を説明せよ」とある。3つの異なる「観点」を明確にすること、課題を単純に挙げるだけではなく、現状の問題点や課題の詳細、波及効果なども意識した解答を心掛ける必要がある。
解答事例では「CO₂ 分離・回収技術力の向上」、「CO2 の液化・圧縮技術力の向上」、「長期/ 安定的な地中固定技術確立」の3つの課題を「捕集」、「輸送」、「貯蔵」という異なる観点から挙げた。尚、テーマがCCSである以上、捕集技術と貯蔵技術に関する課題は挙げたいところである。その他、「貯蔵後のモニタリング」や「貯蔵場所探索のための掘削技術力の向上」等の課題を挙げても良い。
設問(1)では、課題を導き出すための抽出力と課題の妥当性が問われる。そのため、文章は、①現状→②問題→③観点→④課題→⑤課題の内容(補足・詳細・波及効果・自己の貢献など)という流れで記載すると理解しやすいパラグラフとなる。
1.1では、「①②化学産業のCO2 排出量は国内の約17%を占め、鉄鋼についで第2位である(環境省)。排出されるCO2を捕集し環境への負荷低減は化学産業の責務である。③CCS のスタートとなる「捕集」の観点から、④CO2 分離・回収技術力の向上を課題とする。⑤その内容は他分子からの高濃度分離と安価且つ安定な回収である。」とした。
1.2では、「①②捕集したCO2 を処理施設まで運ぶことが必要。気体輸送は安全性の問題や巨額な投資が必要という問題がある。③「輸送」の観点、④CO2液化・圧縮技術力の向上を課題として抽出する。⑤NEDO は、安全且つ低コストな大量輸送技術の確立を目指し、世界初の低温・低圧液化CO2 の大量輸送に向けた実証試験を展開中である。」とした。
設問(2)では、化学技術が最も貢献できると考える理由を述べる必要がある。最重要課題とする理由は、①化学技術の専門領域、②化学産業の使命(責務)、③人命に関する問題、④抜本的、⑤究極的、⑥喫緊などの視点から考えると比較的容易に導き出せる。
例えば、①の「分離プロセス設計や反応機構の解析等、化学技術が最も得意な専門領域であるため」のような記載してはいかがでしょうか。
解決策では、専門的学識が評価されるため、解答事例では、「アミン化合物(MEA)」「耐食性、腐食性、揮発性の改良」、「分離・回収コスト」、「CO2分離膜」などの専門用語を交えて記載した。一方で専門的すぎて一般の技術者が理解できない内容はコミュニケーションの点で避けるべきである。
例えば、「CO2分離・回収技術力向上」の解決策として「CO2吸収液の改良」と「膜分離法の高性能化」が挙げられよう。設問(1)と同じく、解決策を導き出すための抽出力と解決策の妥当性が問われる。そのため、文章は、①現状→②問題→③解決策→④解決策の内容、という流れで記載することをお勧めする。例えば、2.1では、①②現在、CO2との反応性が高いモノエタノールアミン(MEA) が吸収液として一般的だが、腐食性、揮発性、劣化性の改善が求められている。③CO2吸収液の改良を解決策とする。④三菱重工製の吸収液は、MEAよりも揮発性・劣化性が改善されており、世界最大級のCO2 回収PJに採用されている。私は、水溶性高分子との併用やアミン高分子量化などで揮発性・劣化性を更に改善できると考えており、高分子技術者として貢献したい。
尚④は、企業や研究機関が実施している好例、自己の技術の貢献、波及効果などを挙げると「一般論からの脱却」の点で好ましい。
設問(3)では、リスクと対応が求められており「評価」能力が問われる。さらに対応については「専門技術を踏まえた考えを示せ」とあり、ここでも専門的学識が問われる。必須科目であること、および設問(2)を考慮すると、ここでの「専門技術」も「化学部門の専門技術」ととらえて良い。「技術情報漏洩による模倣リスク」と「環境への有害性リスク」を挙げた。また、それぞれの対応策として、「情報管理体制の充実(含好例)」、「フェールセーフ機構、リスクアセスメントの徹底」に言及して専門性をアピールすると良い。
設問(4)では「技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。」とある。題意および論文記載の課題や解決策に即して「業務遂行上必要な要件・留意点」を記述する必要がある。技術者倫理については「公益の最優先」、持続可能性については「SDGs」の視点から述べると良い。
技術者倫理については、「CCSに関する技術の向上ばかりに目を向けず、安全性等最優先されるべき項目の評価を怠らないことに留意する。技術者倫理の観点から、公益の確保を最優先とした安全性の担保や有害性の排除を念頭に置いた業務遂行がその要件となる。」として、1文目は「論文記載の課題や解決策」に即した記載、2文目は「公益の最優先」に関する記載内容とした。また、社会の持続可能性の観点からは、SDGsの「作る責任・使う責任」を取り上げ、「ライフサイクル全体を俯瞰した開発試行がその要件」とし、2文目は「CCS用素材や装置不具合は、有毒な高濃度CO2により重大事故を誘発する可能性がある。法遵守はもちろんのこと、データの改ざんや不正防止にも留意する必要がある。」とし、題意に即した内容とした。
















