これから唐牛健太郎のことを書く。
これはあくまでもフィクションとしてである。
佐野眞一が著したものでもなければ西部邁が語ったことでもない。
世に言う六十年安保の全学連委員長唐牛健太郎のフィクションとして書くのである。
唐牛健太郎を別に英雄視するのではなくまた行動歴を絶賛するものでもない。
すべからく外面を六十年安保の彼の勇姿を現世に置き換え、ありとあらゆる諸事を爆発的に自虐的に挑発的に物語として構成していくためである。
唐牛健太郎は六十年安保の全学連の委員長であった。
彼は北大の共闘委員長だった。
そして彼は世に言う母子家庭で育った。
いわゆる「庶子」だった。
高倉健が好きな野球少年でもあった。
物語はそんな前提で始まる。
あくまでもフィクションである。