いつもお読みいただきありがとうございます。
先月ブログにも書いた、お友達のAさんは、今月、手術をされることになりました。
幸い、検査結果は最初に思っていたよりは深刻ではなく、部分切除ですむことになっています。
術式は、腰椎麻酔で行えるレベルで30分〜1時間程度で終わるため全身麻酔ではありません。
鎮静剤は使用するので、意識はない状態にはなると思いますが、下半身のみの麻酔なら、気管内挿管をしたり、人工呼吸器管理にはならないと思います。
ところが
説明を聞きに行ったAさんは、術前の説明で、”絶対に禁煙してくださいね。禁煙しないと手術はできません”と言われたそうです。
え?そうなの?と思いました。
私は脳神経内科医なので、研修医のときしか、手術についての知識がありません。
私が研修医だった20年以上前は、”絶対禁煙してください”という説明はなかったので、今は厳しくなったな、と思いました。
Aさんは、病気のことも手術も不安だけど、禁煙できないこと、喫煙していたら手術してもらえないといわれたことで、メンタルが不安定になっていました。
彼氏さんも、そのケアを一生懸命されていましたが、医療のことでもあるため、私のところに何回かLINEがきました。
最初は、”え?病気になって命の危険もあるかもなのに、それよりタバコが大事ってこと?”と思いました。
普通、この状況になったら、命が大事だし、病気を治し、悪くならないためにも禁煙、できるでしょ??と思っていました。
しかし、何回もLINEのやり取りをするうちに、それができない人もいるとわかりました。
Aさんは、喫煙が習慣になっていて、かなり依存をしていることがわかりました。
ニコチンが体内に入ると、ドーパミンだけでなく、ノルエピネフリン(覚醒、食欲抑制)、セロトニン(気分の調整、食欲抑制)、アセチルコリン(覚醒、認知作業の向上)などの神経伝達物質の分泌にも関わっています。喫煙してニコチンを常時摂取するようになると、これらの神経伝達物質の調節をニコチンに委ねてしまい、自分で分泌する能力が低下します。
ー厚生労働省 ニコチン依存症のサイトよりー
体外から過剰にニコチンがはいると、本来自分で分泌できていた、幸せホルモンがだせなくなる・・・
怖いことです。
つまり、タバコがないと、幸せな気分になれないという状況のようでした。
なので、禁煙するなら、他のことで幸せになる必要があるのです。
それは、美味しい食事や、趣味、運動、人と話すといったことで代わりになると思うのですが、ニコチンへの依存性が高いと、それだけでは足りない!となるようです。
Aさんに、”なんでタバコ吸うの?”と聞くと、上に書いたような状態以外に
”タバコを吸うと、イライラがおさまるから”とのことでした。
では、なぜ、イライラするの?と聞くと、我慢してしまうから、と。
何を我慢してイライラいるかというと、推測ですが、
”自分の思い通りにならない職場のこと”や
”自分が思ったように答えてくれない人" に対して、だと思います。
自分でどうしようもないことを、どうにかしようとすると、ストレスが蓄積するのは当たり前だと思います。
どうにかできるなら、イライラしたり我慢したりせず、どうやったら解決できるかを考えればいい、とお伝えしました。
でも、今のAさんには、気持ちの余裕がない状態でした。
ちなみに、なぜ、術前に禁煙しないといけないかというと
①気道内分泌物(痰)が増加して、術後に苦しい。そして肺炎になるから
②傷口がなおりにくいから
③心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症リスクが高くなるから
という理由が大半でした。
禁煙は、本当に難しいことなんだな、と思いますが、みんなで、Aさんのサポートをして、無事手術が終わるよう祈っております。