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先日、4年前に初めて受診された患者さんが、再度来院されました。
53歳の女性で、表情に暗い影のある細身のKさんという女性です。
4年前の初診のときの紹介状では、”物忘れがひどいので精査お願いします”とかいてありました。
若い方なのに物忘れということは、膠原病、ビタミンB1,B12欠乏、水頭症、腫瘍、など、各種精査が必要と判断しました。
初回の診察時に行った、長谷川式認知症スケール(HDS-R)は30点で、満点でした。
しかし御本人は”自分が数分前にやったことも忘れてるんです”といわれていました。
頭部MRI,脳血流検査、採血結果は異常なく、また認知テストの結果も正常でした。
このため、ご年齢的にも更年期障害が疑われたため、婦人科の受診していただくようお伝えし、1度私の外来は終了しました。
紹介先からは、”エストロゲンの低下を認め、症状からも中等度の更年期障害を疑います”と返事があり、婦人科で加療されることになっていました。
ところが
翌年も、その翌年も、全く同じ症状で私の外来の受診を希望をされました。
その都度、ちゃんと診察しました。
Kさんの訴えは
”眠れない”
”家族間でストレスがある。でも具体的なことはいいたくない”
”自信がなくて、どうしたらいいかわからない”
”しなきゃいけなくても動けない”
”ADHDなのかもしれないですが、集中力がないんです”
・・・とメンタル面のほうが、物忘れの訴えより比重が多かったです。
このため私は、毎回一生懸命、自分なりにですが、カウンセリングを行っていました。
でも心の中では
”この治療内容は、本来、臨床心理士さんのほうがプロだし、私は心療内科医ではないし”と思っていました。
そのことは、3回目の受診のときKさんにもきちんと伝えました。
”私の外来では時間的にもカウンセリングを長時間することはできません。また、専門的にカウンセリングのスキルを勉強したこともないので、十分なことはできないです”と伝えました。
Kさんは、”でも、でも!!先生に聞いていただいたり、アドバイスしていただくと、私、なんとかなるって気持ちになるんです”と言われました。
そのお言葉は嬉しかったのですが・・・
正直、心療内科的なアプローチまではこの外来ではできないと思っていました。
そのKさんが、紹介状を持参され、4回目の受診をされました。
当日、診察してお話を聞くと、なんと、これまでの4回の受診と全く同じ症状だったのです
その時・・・
Kさんが私の前に何度も現れてくださり、悩みを話してくださるのは、私にとって大切なことがあるのではないか?とふと思いました。
”覚悟をきめて、正面からKさんの心に向き合い、どうしたらいいか一緒に考えることがお互いにとって必要なのだ”
外来中でしたが、そういう不思議な感覚になりました。
次の患者さんは来られていなかったので、私はKさんとじっくり話すことにしました。
続く