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日曜日に行くタリーズ

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私は大学病院時代、多くの外勤先に行っていました。

 

医局派遣のバイトで、午前中は大学の外来をして午後からは老健の病棟管理といった具合です。

 

大学をやめたあとは、友達のクリニックから依頼されて、往診で複数の老人保健施設やグループホームの入所者さんを診察していました。

 

中心静脈栄養の処置が必要だったり、人工呼吸器の管理が必要だったり、パーキンソン病の患者さんの内服調整を依頼されたり、とても忙しかったです。

 

老人保健施設では、大部屋と個室がありました。

 

大部屋には、主に医療が必要な患者さんがおられ、個室は比較的自立した方がおられました。

 

自立といっても、なんとか車椅子に乗り移ることができる、という感じでした。

 

いずれも、病院になんらかの疾患(多くは脳梗塞、認知症からの誤嚥性肺炎など)で入院され、リハビリテーション転院をはさんで、入所された方でした。

 

このため疾患特有の、症状が多くみられました。

 

認知症による、被害妄想、暴言、暴力、介護への抵抗、入浴拒否、昼夜逆転です。

 

重度の認知症の方が1人おられるだけで、本当に大変です。

 

昼夜構わず叫んだり、おむつ交換しますと声をかけてから行っても、”なにするんだ!馬鹿かお前は!!”などと暴言をはかれ、看護師さんが蹴られていました。

 

看護師、介護士のみなさん、お仕事なので、耐えておられました。

 

普通の生活で、ある人のお世話しているのに、蹴られたり噛まれたり、つねられたりされたら、みなさん、どうされるでしょうか?

 

なにすんだ!!と反撃することもあると思います。

 

でも、これは介護の現場では毎日のようにあるのです。

 

私は医師なので、診察の時、”今日は〇〇さんの診察にきました。胸の音を聞きますね”とちゃんと声をかけても、突然頭突きされたこともあります。

 

けっこう痛いし、びっくりします。

 

”優しい声掛け” とか ”礼儀正しい態度” が通じる患者さんは、認知症の程度がそれほど重くない方でした。

 

重症化して、自分の周りの世界のことがわからなくなった方にとって、人から触られる、知らない場所(お風呂、食事のところ)につれていかれるのは恐怖です。

 

認知症が進行すると、直前のことも記憶できないので、毎日いく場所でも、睡眠不足とか体調が悪いときは、”恐怖体験” になるのです。

 

入浴にしても、患者さんからしたら、”誰だか知らない人がきて、なんだかわからないところに連れていかれて、裸にされた!!”

 

やめろ!なんだこいつ!!!となるわけです。

 

仕事をしている側からすると、”今日は男性の入浴日だから、◯号室の〇〇さんをお風呂におつれする” ということをしているだけですが、相互の間にはこれだけ認識の乖離があります。

 

よって、入所者さんの行動を言葉にすると、介護への抵抗、となります。

 

私は介護士さんや看護師さんの処置の手伝いをすることが何回もありましたが、彼らの腕にはアザや歯型がたくさんありました。

 

そういう現場なのです。

 

最近、介護する側の人の暴力が報道されますが、報道される、ということは、レアケースだからだと思います。

 

日常的に暴言暴力を振るわれ、入浴介助中に抱きつかれたりするセクハラ行為を受けている側の介護士さんや看護師さんのことは報道されません。

 

暴力はもちろんいけません。

 

なんの解決にもならないですし、相手も自分も傷つきます。

 

ただ、大多数の介護士さん、看護師さん、そして医師は、患者さんからの暴力に対して、

”相手はご病気なんだから、お年寄りなのだから”と耐えています。

 

ただ、限度というものがあります。みんな、人間なので。

 

もっと本当の介護現場のことを知ってほしいと思います。

 

何年もいろんな現場をみてきましたが、本当にプロ意識の高い方が多かったです。

 

しかし、一生懸命がんばる人ほど、耐えきれず辞めていきました。

 

給料面も仕事にあっているとは思えないです。

 

以前、回診についてくださった看護師さんに”腕、大丈夫ですか?アザがすごいですね。。。湿布ありますよ”と声をかけたことがあります。

 

その時、”先生、優しい言葉ありがとうございます。そういう言葉1つでがんばろうって思うんですよ。

ご家族さんからも、ごめんなさいね、お世話になっているのに、、、いつもありがとうっていわれると、楽になるんです”と言われました。

 

すごいなって思いました。

 

私ができることは


”なぜ、〇〇さんは怒っておられるのか?攻撃性が高くなったのか?恐怖からだろうか、不安からだろうか”と考え、ちゃんと患者さんと対話することです。

 

攻撃性が高まっているときは、なにか理由があるはず、と思うからです。

 

医師は診察して治療を考えればいいですが、現場のスタッフには、”相手の気持ちを考え、分析する”などといった余裕はないのです。

 

入所者さんや、患者さんも、そこで働くスタッフも傷つかない医療、介護になるといいなと思います。