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私が医師になったのは、いまから24年前です。
当時は、いまよりずっと、研修医の身分が低い時代でした。
医学部1学年に120名程度の学生がおり、そのほとんどが、大学病院に就職し研修医となるため、大学側も、下っ端に困らなかったのです。
いまでは、マッチング制度、という制度ができ、大学病院一極集中を避けるため、いろんな病院に、医学部を卒業した学生が行けるようになりました。
病院側が、”うちではこんな研修ができます!指導医が優しく、丁寧です。
この病院で勤務すれば、専門医取得もできます。給料面でも保障手厚いです”
といった広告をだし
学生に説明会を開いたり見学会をひらき、医学部生から選ばれる病院になるように工夫されています。
私が研修医になって、のちに、脳神経内科へ入局したとき、どんな風だったかというと・・・
研修医初日に、オリエンテーションがあり、必要最低限の手技と、物品の場所は教えてもらえました。
3回程度、練習したら、即、患者さんのところへ実際にいって、点滴をすることになりました。
恐怖なのは、患者さんです。
明らかに、医者になりたてホヤホヤの人間がきて、プルプル震えながら針を刺そうとしているわけです。
こわすぎます。
痛いに決まってます・・・
病院には
「当院は研修施設でもありますので、学生や研修医が診察や採血、点滴を行いますがご了承ください」
と貼ってありましたが、それでも、できれば!!ご了承したくない!
研修医にはやってほしくなかったと思います
研修医には指導医が基本1名つきます。
しかし研修医が多いときは1対1ではなく、複数の研修医に指導医の先生1人、ということもありました。
すると
指導医の先生の取り合いになるのです。
で
”こいつはもう1人でできそうだ”と指導医の先生が判断すると”1人で採血行ってこい!”と言われます。
ある先生は、
”中心静脈栄養(通称CV)やったことある?3回あるんだ、じゃあ、この人に5分でやってね”
とむちゃを言ってきました。
職人さんの修行と同じです。
上級医の手技、診察を懸命にみて、そこから学ぶ、という仕事でした。
見ていてわからなかったことを聞くと
”忙しいんだから、それくらい自分で調べろ!”といわれることもありました。
インフォームド・コンセント、つまり、患者さんへの説明にも複数回つかせていただき、説明の仕方を学びました。
この先生の説明はわかりやすい!と思ったら、それを最初のうち、真似していました。
自分で、何度も何度もご家族や患者さんに説明をしました。
そして、その時質問されたとき
”ああ、こういうところが分かりにくいんだな”
”もう1度同じことを聞かれるということは、1度で話す内容が多かったかな” と
一人反省会をします。
それを2,3年した結果
私は、インフォームド・コンセントの内容は
「事前に自分なりに書面にまとめておく」
というスタイルに落ち着きました。
◯月◯日、◯時から、3名の患者さんご家族と面談、と決まったら
検査結果を印刷し、MRIや脳血流画像は、病気がわかりやすい部分を印刷します。
その画像の用紙の病変部位に◯をして、どういう働きをしている場所が病気になったか書いておくのです。
そして、A4の用紙には、入院から説明日までの経過のまとめと、今後の方向性を書きます。
その内容はカルテに保存します。
結果、当日同席できなかった看護師さんや、リハビリを担当してくれている先生方にも内容が共有できます。
当日は、個室にご案内し、立ち上がって挨拶し、自己紹介します。
いきなり説明するのではなく、
”ご入院されて不安だと思いますが、なにかお困りのことはないですか?と聞きます。
一方的に話される先生のインフォームド・コンセントに同席したとき、あとから、研修医である私に
”あの先生っていつもあんな感じですか?
なんか、冷たい感じですね。わからないことも聞けなかったし”と言われたことがありました。
なので
対話することを前提に説明をします。
事前に説明用紙を準備しているので、患者さんやご家族の話を聴く時間にできるのです。
こうして、私の医師としての「仕事のスタイル」はできあがりました。
なんでも最初は、失敗したり、怒られたり、猛烈に反省したり後悔するものです。
ただ、そこから、自分なりに工夫する、もっとよりよくしたいと思うことが大事だと思います。
単に人まねではなく、人の仕事をみて、自分が納得できる仕事スタイルを作ることが、大切だと思います。
1回目の面談で、時間をかけて準備して、説明用紙もお渡しし、質問にも答えておくと、ご家族も安心されます。
医師の仕事にかぎらず、”この人なら、このお店なら、大丈夫だ” と思ってもらう。
どんな職業にも大切なことだと思います。