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皆さんは、ご自身、あるいは、ご家族が入院されたことがありますでしょうか?
私は、自分の入院が4回あり、あとは、亡き母の入院がありました。
その時、看護師さんや、医師から説明と、多くの同意書の記載がありました。
私自身、今は、フリーランスで当直なしで働いていますが、大学病院時代は、月に何回も当直もオンコールという、自宅待機もありました。
脳神経内科は、脳出血以外のすべての脳の病気を担当します。
なので、夜間の脳の救急ではすべて、病院から緊急連絡がありました。
このため、待機の日は、食事も風呂も安心してできない、そんな日々でした。
ERから連絡がきて、病院に直行し、患者さんの診察を素早く行います。
すぐに病変部位と疾患を特定、入院病棟をきめ、病棟看護師に連絡し入院準備をしてもらいます。
ここまでだいだい早いと30分以内です。
病棟のお部屋が用意できるまでの間に、患者さんの病歴を把握するためカルテをすべてみます。
採血をオーダーし、追加の画像検査を入力、そして看護師さんへの指示出しをすませます。
病棟へ患者さんが搬送されるころには、私はいつも自分のすべきことは終わっていました。
あとは、ゆっくりご家族に、病状説明や診断名、今後予測されることを説明します。
この説明が、1番、大変で、1番大事なのです。
なぜなら、その時のお互いの印象というのが、その後の入院生活を左右することがあるからです。
脳梗塞の場合に限らず、入院された場合、医師は、病状説明のほかに、
「患者さんが急変された場合にどのような処置を希望されますか?」
という、いわゆる延命を行うかどうか、聞かないといけなかったのです。
それは、どんなに軽症の脳梗塞でも、必ず必要でした。
なぜなら、”このくらいの脳梗塞なら命に関わることはないだろう”と思っていても
高齢者の場合は、入院中に突然、心筋梗塞を併発され、命にかかわることがあるからです。
そんなとき、自分が待機担当でない場合は、主治医ではない別の医師が夜間対応を行うことになります。
その際に、治療を行っても、残念ながら回復が難しい場合に、どういった処置をご家族、ご本人が希望されているか、カルテに記載されていないと、大変なことになります。
医師は、明確な希望が記載されてなければ、蘇生措置を行い、気管内挿管を行い、人工呼吸器に装着します。
ところが
”うちの父は、延命を希望していませんでした。なので、その機械を外してください”と言われることもあるのです。
当時の日本の法律では、人工呼吸器を外すことは、許されないことでした。
今では、「複数の医師および医療チームで議論されること」「なんども家族と話し合って協議した結果、その選択をする決意が固いこと」などプロセスをふめば、延命処置の中止は可能といわれています。
こういった、患者さんと、家族にとって、最も重いテーマを初対面で、しかも緊急入院されたときにしなければならないのです。
これは、医師にとって、非常に大変なことなのです。
突然の入院になり、ご家族は動揺されていますし、病気も、生死についても受け入れができるような状態ではないのです。
ですが、病院のルールで、どうしても説明し、同意書を書いてもらわないといけません。
その時、私はいつも、医師として客観的な事実と、延命の現実を伝えると同時に、一人の娘として、親を思う気持ちを持って話します。
初対面のご家族に、深夜、じっくり向き合って、命について、一緒に話し合って考える時間。
何百回と経験しましたが、いつも、厳粛な気持ちで、1つ1つのご家族と向き合ってきました。
その時間を大切にしたことで、初日にお互いの信頼関係を築くことができたように思います。
心を開いて、お互い、思っていることを、会話したことは、深い深い人との時間でした。
次回は、人の命について、ご家族や私がどんな話をしてきたのか、書かせていただこうと思います。