いつもお読みいただきありがとうございます😊


 


私は医師になって今年で24年です。

 

その間に、何度も、そのときの自分が持っている最大級の知恵と知識と経験値を総動員して決断しないといけないときがありました。

 

その決断をするとき、いつも、みぞおちのあたりが熱くなり、背筋がピンとのびる感じがありました。

 

行動すると決めたら、丹田(へその下あたりの場所)に力をこめて、一気に決断します。

 

弓道で、弓を放つ前のイメージです。(大学時代、弓道部でした)


プライベートでも、さまざまな決断を1人で繰り返してきました。(詳細は、ブログや、本に書いております😊)

 

先日、また、”娘さんだけで、先生と話をしたいと言われています”という相談がスタッフからありました。

 

こういう時は、必ず、なんとしても時間をとります。

 

なぜなら、電話までして、無理を言われるということは、それだけ相手は追い詰められているからです。

 

時間をとって、話を聞きました。

 

患者さんはパーキンソン病の女性Sさんで、相談はその娘さんからでした。

 

いつもこられている長女さんではなく、次女さんが、どうしても、ということでした。

 

せっぱつまった顔で来院された次女さん。

 

”先生、忙しいのにご無理をいってすみません。


実は母のことで相談です。動きが悪くなってきているのは仕方ないと思うのですが・・・


母が夜に寝なくて、15分おきに父を起こして幻覚や不安を訴えて。


あげく、トイレの失敗もして、父が限界になってしまいました。


優しかった父の目つきがおかしくて、もう、母を殺してしまうんじゃないかって・・・”と

 

やはり深刻なお話でした。

 

こういった老老介護は、日本全体に何万と起きていることです。

 

誰にも頼れず、相談できなかった介護者が悲しい犯罪を起こすことがあります。

 

今回のケースも、ギリギリだと思いました。

 

次女さんが、私に言ってほしいことがわかりました。

 

姉である長女さんと本人は、施設への入所は体裁が悪いから、嫌だと以前から言われていました。

 

古い地域で、いまだに、施設にあずけることを、”親を施設にいれて捨てた”というようなことを言われるんだそうです。

 

言いたいやつには言わせておけばいい!と言うのは、無責任な意見だと思いました。

 

次女さんからは、お姉さんにもお母さんにも言えないことなので、私から、施設入所を勧めてほしいという相談でした。

 

そして昨日

 

Sさん、長女さん、次女さんが来院されました。

 

Sさんは不眠が続き、目の下にくまがあり、食事もとれなくなり、脱水も進行していました。

 

手足も冷たくなっていて、状態が悪いのは明らかでした。

 

Sさんに点滴をしながら考えていたことを伝えました。

 

 

”長女さんも、ご本人もお父さんも、充分がんばられました。

でも、Sさんが安全安心に家で暮らすことはできないです。

愛するご主人に、おむつを交換してもらっています。


病気だから仕方ないとはいえ、ごめんね、ごめんねと毎回言われている本人さんも、辛いし苦しいと思います。”

 

”介護は、プロにおまかせして、ご家族はその方々に感謝しながら、施設に会いにいって、楽しい時間を過ごすことで充分だと思います。”

 

”施設にはいれば、家より温かく、バリアフリーで、食事は栄養を考えてでてきますし、何より、社交的なSさんは、お友達ができて、楽しい気持ちになって、元気になると思います”

 

家でがんばることが、最善ではないときもあります。娘さんが仕事のあとに、無理をして家にきて、お母さんお父さんの面倒をみておられることをSさんは心苦しく思っています。母親だからです”

 

こういったことはきっと、ご家族もわかっておられるのです。

 

でも、言葉にだすのが難しい。


他の家族から冷たいといわれそうで怖い。

 

施設に入れるという単語だけが独り歩きして、それが”悪いこと”のように思われています。

 

そんなことはない。


家にいて、みんなに迷惑をかけている、と怯えて暮らすより、施設で暮らすことが、本人のよりよい人生に繋がるのだと伝えます。

 

もう充分

 

もう無理しないでプロにまかせましょう

 

家族ができることは、直接介護することだけではないです


 

これは、Sさんとたくさん話をし、彼女の性格を知り、彼女の人生観をいままで外来で聞いてきた主治医にしか言えない言葉だと思いました。

 

お互い意見を交換し、娘さん2人は、ホッとした顔で帰られました。


ケアマネさんと施設を探して入所費用を計算することになりました。

 

Sさん本人も、考えてみます、と言われていました。

 

医師の言葉は、本当に重い、といつも思います。

 

それはがんの告知の時や難病の告知のときだけでなく、今回のように家族間の問題に切り込むときも、重い責任があります。

 

でも、時には、ご家族と本人の命を守るために、いうべきことは言わないといけないのです。

 

そんな外来をしたあと、どっと疲れます。

 

でもそれが、主治医の仕事です。

 

覚悟してこれからも精進するのみ!!


と、コンビニで衝動買いした激甘スイーツと珈琲を飲みながら思いました😊