いつもお読みいただきありがとうございます。

 


地震が起きる前

元旦に見上げた森の中


元旦の夕方に発生した石川県の大地震、大変な被害が報告されています。

 

亡くなった方もおられ、負傷されて病院へ搬送されても病院が断水して治療が困難と報道されていました。

 

年始から被災された方のことを思うと、本当に心が痛みます。

 

コロナ禍が終わって、ようやく故郷に子供さんたちと帰省されていた方もいらっしゃったと思います。

 

このような時、私には何もできることがないと思ってしまっていましたが、募金をしたり、可能なら、現地に行って活動したいと思います。

 

今すぐには、できないので、ブログにおくすりについて書いて医療の情報提供をさせていただこうと思います。

 

お薬には、それぞれ、半減期といって体内の血中濃度が50%になる時間が決まっています。

 

鎮静薬である、ロキソニンは、半減期は添付文書によると1時間半です。効果発現までの時間は40分以内とされています。

 

半減期が1時間半ということは、そこからさらに半減期が経過するごとに25%、12.5%、6.25%と減っていくため、体の中からお薬がなくなるまでには半減期の4〜5倍の時間がかかると言われています。

 

パーキンソン病の治療薬のL-dopaは半減期がかなり短く、約1時間です。このため体内からお薬の効果がきえるのは3時間前後です。

 

この時に、wearing off(薬の効果がだんだん少なくなる現象)やon off現象(急に動けなくなったりその逆に動いてしまうこと)がある段階のパーキンソン病の患者さんの場合、お薬が手元にない場合、大変なことになります。

 

以前にブログにも書きましたが、on off 現象が強い患者さんが、トイレにいかれて40分くらい帰ってこられなくて、探しに行ったところ、トイレでオフになり、全く動けなくなり汗だくだったことがありました。

 

もし

 

このようなことが、災害によって起きてしまったら。

 

お薬が手もとになく、薬の効果が切れてしまったら、逃げ遅れてしまったり、助けを呼ぶことができないかもしれません。

 

また、避難するときに、避難用品をいれたバックの中に、お薬を入れていても残薬が少ないと、大変危険なことになります。

 

災害からの復旧はどれくらい時間がかかるかわかりません。

 

今回のように病院自体が被災してしまったり、道路が寸断されてお薬が届かないと、パーキンソン病の場合は、命に関わります。

 

突然の断薬による、悪性症候群が起きる可能性があるからです。

 

悪性症候群は、向精神病薬や、パーキンソン病治療薬の急な中止によって起きる非常に危険な状態です。

 

全身の筋肉が硬直し、筋肉が壊れ、CPKという酵素が血中にもれだし、このことが原因で、腎不全となり最悪の場合死に至ります。

 

筋肉が崩壊すると、細胞からカリウムも放出されるため、高カリウム血症となり、このために心停止することもあります。

 

このため、私の患者さんには、いつも、”お薬は多めにもっていてください。避難するときの防災グッズの中にも10日分くらいはいれておいてください”とお伝えしています。

 

大雪、大雨、地震、そういった自然災害によって、病院に来られない可能性があるからです。

 

日光にあたらないところで湿度が高くない場所であれば、お薬は1年程度は保管できると言われています。

 

私の防災グッズの中には、夫の片頭痛用のお薬、鎮静薬、キズぐすり、抗生剤、自分の持病の薬、包帯、ガーゼなどが入っています。

 

お薬は余りなく飲んでいただくのが理想ですが、きっちり飲み切ってしまっていると、災害のときに困ることがあるので、ある程度余裕があったほうがいいかと思います。

 

なお、パーキンソン病の患者さんで、災害などで手もとにお薬が全くなくなってしまったら救急外来を受診して、点滴でLdopaを補充していただいてください。

 

この記事が、被災された方、またお読みいただいている方の、お役に少しでも立てますように願っています。