10分で考える

外資系企業の上司の下で働くようになってから驚いたことの一つは、仕事におけるスピード感の違いです。

「これについてアイディアを考えて欲しいんだけど、10分待っているから考えを聞かせてくれない?」

これも藤野マネジャーからのリクエストです。

「え、じゅ、10分ですか」

いかに仕事の濃度を上げるか

短い時間にアイディアを絞り出し、ほとんど殴り書きのような文字で考えをまとめます。とても社内で提出する書面とは言えない代物ですが、私が10分でできるものはこれで精一杯です。ところが藤野さんは私が出したアイディアを丁寧に読んでいきます。急いで書いた私の文字はところどころに判読できない箇所があり、彼女はその都度、私に質問します。

以前の上司であれば「なんだ、この雑なレポートは」と叱り飛ばされるところですが、そのあたりはまったく意に介さない様子です。

一通り目を通した彼女がおもむろに「この部分は面白いけど、この箇所はもう少し工夫が要るわね」などと指摘します。ちゃんと目を通して、ポイントを私に伝えてきます。

 

「承知しました。わずか10分なので、きれいにまとめることができませんでした。以前なら翌日までとか、もっと時間をいただいていました。作り直しましょうか」

「作り直す必要はありません。10分という時間はわずかなんかじゃないの。大事なのは集中して、いかに仕事の濃度を上げるかということ

勤勉な日本人…?

それまで、私が働いてきた職場でもほとんどの人が遅くまで一生懸命に働いていました。もちろんそれは大切なことだと思いますが、先進国との比較では、日本の生産性はずっと低いままで推移しています。その原因の一つが、いま、彼女に言われたことのように思えました。

彼女が言った「集中して、自分の仕事の時間を大切にする」ことができているのか、改めて考えさせられます。

 

場面に応じた仕事をする。この場合であれば提出書類はきれいでなくても構わない。なぜなら要求しているのはそこではないから。遅くまで働いていると「頑張っているね」と言われることもありましたが、それまでの自分の仕事を振り返ってみると、結構、無駄な仕事を自分でつくりだしていたのではないかと思います。