あるアグリテック企業が、作物を初期から塩水で栽培することで、環境ストレスへのレジリエンス(耐性や回復力)を高くする技術を開発した。
 

これらは、塩分濃度の高い土壌でも育ちやすい作物だ。地球温暖化等によって、そうした土地が増加していることが問題になっている。
 

土壌の塩害は、全世界で20億エーカー(約8億1000万ヘクタール)超の土地に影響を及ぼしており、人類が生きるために必要な作物の収量を減少させている。

 

ほとんどの作物は塩水に弱いが、イスラエルのサリクロップ(SaliCrop)社の研究室で芽を出しているトマト、アルファルファ、タマネギ、イネは違う。

 

これらは、植物分子生物学者で、サリクロップの共同創設者であるリチャ・ゴドボール(Ṛcā Godbole)が考案したnon-GMO(非遺伝子組み換え作物)だ。ただ育つだけでなく、塩水に耐えて育つ作物だという。

 

深刻な塩害は、スペインだけでなく世界各地で起こっている。長年にわたる灌漑に、地球温暖化と海面上昇の影響が重なることで、全世界の灌漑土壌の20~50%が塩分濃度過剰となり、作物が育ちにくくなっている。塩害による不作は、世界経済に年間推定270億ドル(約4兆円)相当の損害をもたらしているという。

 

塩水栽培に成功

サリクロップの研究者たちは、土壌の塩分濃度や気温の上昇など、変化する世界がもたらすストレス下で成長できる、レジリエンス(耐性や回復力)のある作物を複数種類、開発している。

 

また海面上昇によって増える洪水も、土壌や地下水の塩分を増やすため、特に沿岸部の農地にとっては脅威だ。また、不適切な灌漑も、土壌の塩類集積を招く原因となる。たとえば、不適切な水の利用、塩分を含んだ水の使用、排水不良といった問題だ。

 

非遺伝子組み換え作物で、未来への種をまく

「我々のソリューションは、今後1、2年で世界に普及すると考えている」とデビアは言う。サリクロップはこれまで、25~250エーカー(約10~100ヘクタール)規模の農場を対象としてきた。世界全体では、ニューヨークのセントラルパークの4倍強にあたる3700エーカー(約1500ヘクタール)あまりの農地で、サリクロップの種子が栽培されている。