過去あるいは未来の別の時空を訪れた場合、時間軸を越えたウイルス感染は起こり得るのだろうか。

 

世界を混乱に陥れたコロナ禍の2020年に100年以上前の時代にタイムスリップしてしまったホームレス男性の逸話が興味深い。

 

はたして彼は過去の時代に新型コロナウイルスを持ち込んでしまったのか――。

 

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1 街を歩いているうちに過去にタイムスリップ
 

 

 ウイルスや感染症の影響も想定できる。訪れた先の時代には存在しないウイルスを持ち込んでしまったら、どうなるのだろうか。
 ーーところが、コロナ禍のロックダウン中、実際に100年前の時代へと束の間のタイムスリップを経験したホームレス男性がいるという。しかも、タイムスリップの時にはまだコロナの症状は出ていなかったが、感染していた可能性があるというのだ。

 

 目抜き通りに到着しようかという時、ギャビンは周囲の異常に気付いた。ロックダウン中にもかかわらず人々の声、荷馬車の走る音などの雑踏の騒音が響き、強い日差しが照りつけてきたのだ。

 街角のマクドナルドは見当たらず、代わりに巨大なパブハウスが建っていた。明らかに昔の街並みであり、しかも季節は夏であるかのような日差しと気温であった。

 

2 過去の時代にウイルスを持ち込んだ?

 職務質問には慣れているギャビンは「お巡りさん、信じられないでしょうが、私は西暦2020年から来たのです」と先に白状した。しかし自分でそう言ってみて、物事の奇妙さを実感することにもなった。今いるこの場所は、おそらくビクトリア朝時代なのだ。

 

 プログラマーという職業を理解できない警官はさらに疑い深い目でギャビンを眺め、逮捕は目前のように思えた矢先、パブから出てきた2人の男が怒声をあげながら路上でケンカをはじめたのだ。

 

 警官はギャビンに少しここで待つようにと言い、男たちのほうへと小走りに向かっていった。

 

 ギャビンはしばらくその場に立っていたが、これはチャンスだと思い足早に路地へと逃げた。街並みは古いもののギャビンにとってこの一帯の地理は勝手知ったるものであったのだ。

 

思いもよらない質問に当惑していた店主の様子を見て、頭の回転の速いギャビンはさっき頭を強打して記憶があいまいになり、今年が何年が思い出せないのだと説明したのだ。

 

 不可解な表情で「1909年だよ」と店主は答え、ギャビンに医師の診察を受けるよう勧めたのだった。

 

 100年以上も前の時代に来ていることを知ってショックを受け、クラクラとめまいを感じたギャビンだったが、気がつくと 周囲は2020年の世界に戻っていたのだった。

 

 この体験の直後、ギャビンは新型コロナウイルスの症状を発症することになった。数日前からすでに感染していた可能性は大いにあることから、病床でギャビンは1909年の世界で会った人々にウイルスを感染させていないかと懸念を深めたのだった。もしも1909年のイギリスで新型コロナウイルスが蔓延した場合、その後のイギリス史はどうなったのだろうか。